遺言執行について 2019民法改正で明確化

遺言執行とは?

遺言者の死後に遺言の内容を実現する手続きを「遺言執行」といいます。この手続きを行う人物を遺言執行者といいます。

相続財産目録を作成したり、各金融機関での預金解約手続き、法務局での不動産名義変更手続きなど、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を持ちます。

✓遺言執行者(遺言執行人ともいいます。)の指定

遺言執行者の指定は、定められた指定方法で選任しなければなりません。

  • 遺言書であらかじめ指定する。
  • 第三者に遺言執行者を指定してもらうような遺言書を作成する
  • 死亡後に家庭裁判所で選任

✓遺言執行者の権限と義務

  • 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知する。
  • 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付
  • 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する

民法第644条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する( 第644条 受任者の注意義務、第645条 受任者による報告、第646条 受任者による受取物の引渡し等、第647条 受任者の金銭の消費についての責任、第650条 受任者による費用等の償還請求等)

遺言執行者がしなければならないこと

遺言執行者に指定された場合、遺言の効力発生時から、遺言執行者に就任するか否かの判断を決めることになります。

1.就任承諾

or

2.就任拒否

この場合、利害関係人(相続人、受遺者など)が家庭裁判所へ申し立て、遺言執行者を選任

遺言執行者に指定されたものが確答しない場合→期間を定めて、就任の可否を催告(催促すること)し、その期間内に確答しないときは、就任を承諾したものとみなさす。

相続人確定の為の戸籍収集

遺言書の写しを相続人に送付する必要がありますが、財産目録を相続人全員に送付するために遺言者の出生から死亡までの戸籍等を収集します。※遺贈者などがあれば、その情報も収集します。

※収集にあたり、一般には通常は戸籍情報を収集することはできないのですが、遺言書と身分証明書があれば管轄の役所で戸籍情報を請求することができます。

相続人全員へ遺言執行者就任通知書、遺言書の写しを送付

相続人が確定したら、遺言執行者として相続人全員に以下のものを送付します。

  • 遺言執行者就任通知書
  • 遺言書の写し

を送付し、遺言執行事務の流れを説明します。※改正前の民法では、遺言執行者に就任した旨や遺言の内容を相続人へ通知する義務がありませんでしたが、2019年の民法改正で正式に規定されました。

遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない 。

出展:民法1017条第2項

✓相続財産の調査 ✓財産目録の作成 ✓相続人全員へ送付

遺言者の相続財産(資産:現金、預金・貯金、不動産、有価証券、負債:借入金)の調査を行います。

そのうえで【財産目録】を作成し、相続人全員に送付します(相続人から遺留分等の請求を受ける可能性があります。 )

✓財産の処分・名義変更

遺言書に記載された内容をもとに相続財産を処分(必要に応じて換金処分)、名義変更 を行い相続人や受贈者の名義に変更

※名義変更、遺産分割が必要な財産の例

  • 土地、建物などの不動産
  • 自動車など固定資産
  • 預貯金
  • 株式、債券などの有価証券

✓業務終了を報告

相続財産の処分、名義変更が終了したら、相続人に務報告書を送付します。

最後に

2019年の民法改正により遺言執行者の立場や業務内容が明確化になりましが、 行政書士や弁護士、税理士などのいわゆる士業が行う場合は別として、

これを親族が行う場合、その負担が大幅に増えました。

相続税の納付期限は、相続開始後(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から起算)10か月以内となっているため、期限もあります。

遺言執行者の責務が現在のところ、依然として一般的に理解されていませんが、法改正で明確になったことで、逆に手順が明確化した分、専門家ではない相続人の負担が増大したと言えるでしょう。

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