はじめに:なぜ今「ストックヤード規制」なのか
金属スクラップやプラスチックを屋外に積み上げて保管・選別する「ストックヤード(金属スクラップヤード)」は、長らく廃棄物処理法の網にかからない「有価物の置き場」として、事業運営そのものを直接規制する法令がありませんでした。その結果、首都圏の郊外を中心に、高積みした保管物の崩落、ヤード火災、破砕・切断作業の騒音、油や汚水の流出といったトラブルが相次ぎ、住民からの苦情が自治体に集中するようになりました。以下、千葉県を例に解説いたします。
千葉県は全国でも有数のヤード集中地域です。県の調査では、県内の金属スクラップヤード等は令和4年3月末時点で332か所、令和7年2月末時点では531か所にのぼります(出典:千葉県 条例ページ、環境省審議会 千葉県提出資料)。こうした状況を受け、千葉県は令和6年4月1日に「千葉県特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例」(通称:金属スクラップヤード等規制条例)を施行し、ヤードの設置を許可制としました。
そして2026年(令和8年)、ついに国が動きました。6月に成立・公布された改正廃棄物処理法により、これまで自治体条例の「つぎはぎ」で対応してきたヤード規制が、全国一律の許可制として法制化されます。施行までには政令で定める猶予期間がありますが、既存事業者・新規参入者のどちらにとっても、今から準備を始めるべき局面に入りました。
この記事では、行政書士の視点から、①国の規制の現状と2026年改正の中身、②先行する千葉県条例の仕組みと許可申請の実務、③他自治体の動向、④事業者が今すぐ確認すべきポイントを整理します。
ストックヤードとは何か
「ストックヤード」「金属スクラップヤード」とは、使用済みの家電・機械・電線・自動車部品などの金属製品や、プラスチック製品、工場や工事現場から出る金属・プラスチックの端材を、屋外で重機(油圧ショベル、フォークリフト、クレーン等)を使って積み上げて保管し、必要に応じて破砕・切断・圧縮・解体・洗浄して、国内外のリサイクル業者や輸出業者に売却する事業場のことです。
扱っているのは「売れる物」、つまり有価物です。ここが規制の空白を生んできた最大のポイントです。廃棄物処理法は「廃棄物」(占有者が自ら利用せず他人に有償で売却できないもの)を規制する法律なので、有価物として取引されるスクラップは原則として対象外でした。平成29年改正で「有害使用済機器」(家電4品目+小型家電28品目)の保管・処分業が届出制になりましたが、それ以外の金属スクラップ・プラスチック・いわゆる雑品スクラップは、依然として廃棄物処理法の規制が及びません。騒音規制法、水質汚濁防止法、消防法なども、特定の施設や作業を部分的に規制するだけで、ヤードの事業運営そのものを直接規制するものではありません(出典:環境省審議会 千葉県提出資料)。
ヤードが急増した背景
千葉県の資料は、ヤード急増の背景として中国の輸入禁止措置を挙げています。中国は2017年末までに生活系プラスチックなどの固形廃棄物の輸入を全面禁止し、2019年末までに工業系プラスチックや金属スクラップの輸入も段階的に禁止・制限しました。その結果、単一素材の原料にまで加工しないと輸出できなくなり、従来は中国国内で行われていた手解体・破砕などの作業が日本国内のヤードで行われるようになりました。
何が問題になっているか
環境省の実態調査(令和7年度実施)では、全国4,625事業場の一部で騒音・悪臭・水質・土壌汚染・火災等の問題が計275件発生しています(出典:環境省 法律案参考資料)。千葉県の調査では、令和3年度末時点の332か所のうち108か所で周辺環境への悪影響が確認されました。具体的には次のような被害です。
- 高積みによる崩落:囲いの高さを超えて積み上げた保管物が崩れ、隣地や道路に流出する。
- 火災:雑品スクラップに混入したリチウムイオン電池や潤滑油、モーター等が発火し、延焼する。
- 騒音・振動・悪臭:重機による分別作業、ガス溶断、破砕機の稼働が早朝・夜間にも行われる。
- 油汚染・汚水流出:油の付着した機器の屋外保管や洗浄に伴い、油や有害物質を含む汚水が土壌や公共用水域に流出する。
国の資料はさらに、環境対策を怠るヤードは操業コストが低いため買取価格を高く設定でき、適正な事業者との公正な競争が妨げられていること、不適正ヤードを経由した金属資源の海外流出が経済安全保障上も問題であることを指摘しています。
国の規制:現行制度と2026年(令和8年)改正廃棄物処理法
国の規制は「現行の届出制(有害使用済機器)」と「2026年改正で新設された許可制」の二層で理解する必要があります。現行の届出制は、新しい許可制の施行と同時に廃止されます。
現行制度:有害使用済機器の保管等届出制(廃棄物処理法第17条の2)
平成29年の廃棄物処理法改正(平成30年4月1日施行)で、「有害使用済機器」の保管または処分を業として行う者に、都道府県知事(政令市では市長)への届出と、保管・処分基準の遵守が義務付けられました(出典:環境省 廃棄物等の処理ページ、宮城県 有害使用済機器規制について)。
- 対象物:家電リサイクル法の4品目(テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機、エアコン)と小型家電リサイクル法の28品目、合計32品目の使用済み機器。
- 届出不要となる者:廃棄物処理業者、家電・小型家電リサイクル法の認定事業者、国・自治体のほか、ヤードの敷地面積が100平方メートル未満の者など。
- 限界:対象が32品目に限られるため、電線・機械・金属端材・プラスチック類・いわゆる雑品スクラップの大部分は対象外のままでした。千葉県が条例制定に踏み切った直接の理由がこの「規制の穴」です。
2026年改正:廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律
| 日付 | 出来事 | 出典 |
| 令和8年4月7日 | 中央環境審議会が環境大臣に意見具申「今後の廃棄物処理制度のあり方について」 | 環境省 報道発表一覧 |
| 令和8年4月10日 | 法律案を閣議決定、第221回国会に提出(閣法第59号) | 環境省 報道発表 |
| 令和8年5月26日 | 衆議院本会議で可決 | 参議院 議案情報 |
| 令和8年6月12日 | 参議院本会議で可決、成立 | 同上 |
| 令和8年6月19日 | 公布(令和8年法律第43号) | 同上 |
| 令和8年7月27日 | 環境省が保管・再生基準など政省令の詳細検討に着手。年度内を目途に政省令公布とガイドライン策定の方針 | 日刊産業新聞 |
| 公布から2年6か月以内 | 政令で定める日に許可制が施行(最も遅い場合で2028年12月) | 環境省 法律案要綱 |
新制度の骨子(出典:環境省 法律案要綱、環境省 法律案参考資料)
- 対象物の定義(第2条第7項〜第9項):使用を終了し収集された物品で、全部または一部が金属またはプラスチックから成るものを「使用済金属・プラスチック物品」と定義。そのうち不適正な保管で生活環境被害のおそれがあるものを「要適正保管使用済金属・プラスチック物品」、不適正な再生(切断・圧縮・破砕・選別・洗浄等)で被害のおそれがあるものを「要適正再生使用済金属・プラスチック物品」とし、具体的な品目は政令で定めます。廃棄物と放射性物質は除かれます。
- 許可制の導入(第24条の7、第24条の15):上記物品の保管業(譲渡のための保管)または再生業を行おうとする者は、都道府県知事の許可が必要になります。知事の権限は指定都市・中核市に移管される予定です。許可基準の例として、経理的基礎、施設が保管・再生基準に適合していること、事業を的確に行う能力、欠格要件(拘禁刑に処された者など)に該当しないことが挙げられています。
- 許可を要しない者:①事業場が小規模(政令で面積等を規定)な事業者、②国・自治体、③製鉄・精錬など完成品の製造工程の一部として再生を行う者。また、廃棄物処理業者や各種リサイクル法(資源有効利用促進法、自動車リサイクル法、小型家電リサイクル法、プラスチック資源循環法、再資源化事業等高度化法)の認定事業者は許可を受けたものとみなされ、基準遵守義務のみ負います。
- 保管基準・再生基準:保管物の高さ制限、囲いの設置、電池・油類・モーター等の分別保管、保管単位の面積上限と間隔、掲示板、コンクリート敷設などの地下浸透防止、油水分離装置、騒音・振動防止が例示されています。具体的な数値は政省令で定められる予定で、2026年10月時点では未確定です。
- 帳簿作成義務と報告徴収・立入検査、基準違反への改善命令・措置命令、許可業者への事業停止命令・許可取消し。
- 輸出確認制度(第24条の13、14、20、21):バーゼル法の特定有害廃棄物等に該当する使用済鉛蓄電池、電子スクラップ、基準未達の使用済プラスチック等は「なるべく国内で再生」が原則となり、輸出には環境大臣の確認が必要。無確認輸出は未遂・予備も処罰されます。
- 罰則:無許可営業、許可の不正取得、事業停止命令違反、無確認輸出等は最大5年の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科。法人には最大3億円の罰金。産業廃棄物処理業者と同等の重さです。
- 有害使用済機器届出制度の廃止:現行の届出制は廃止され、届出事業者は新しい許可制度の対象になります。
都道府県条例との関係:改正法や環境省資料に、千葉県などの条例をどう扱うかを明示した記述は確認できませんでした。少なくとも新法の施行日までは条例が引き続き適用され、施行後の整理は各自治体の判断に委ねられます。千葉県内の事業者は、当面「県条例の許可」を取得・維持し、国の政省令が固まった段階で新法の許可申請に備える、という二段構えになります。
既存事業者の経過措置:法律案要綱は「所要の経過措置等を定める」としていますが、みなし許可の有無や猶予期間の具体的内容は、公表されている概要資料からは確認できませんでした。政令・省令とあわせて確認が必要です。
千葉県「金属スクラップヤード等規制条例」の概要
正式名称は「千葉県特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例」(令和5年千葉県条例第30号、令和5年10月17日公布、令和6年4月1日施行)です。施行規則(令和5年千葉県規則第71号)、審査基準、事前協議に関する指導要綱がこれを補っています。都道府県レベルで金属スクラップヤードを許可制にしたのは千葉県が全国初です(出典:千葉県 条例ページ、条例本文、施行規則、審査基準)。
規制対象:「特定再生資源屋外保管業」
次の3つをすべて満たす事業が対象です(条例第2条、規則第2条)。敷地面積の下限はありません。小さなヤードでも該当します。
- 特定再生資源を扱う:①使用を終了し収集された製品(金属またはプラスチックが使われているもの)、②製造・加工・修理・販売・工事等に伴って副次的に得られた金属・プラスチック。破砕・切断・圧縮・解体されたものを含みます。廃棄物、有害使用済機器、自動車ヤード条例の特定自動車部品、放射性物質は除かれます。
- 屋外で保管する:屋根と周壁を持つ建造物の外。保管だけでなく、破砕・切断・圧縮・解体・洗浄(「破砕等」)を伴うものも含みます。自ら原材料として使うための保管は除外です。
- 規則で定める機械を使う:油圧ショベル(バックホウ・グラップル等)、最大揚高が3メートルを超えるフォークリフト、クレーン。
保管する特定再生資源は「金属スクラップ(金属のみ)」「プラスチック類(プラスチックのみ)」「雑品スクラップ(それ以外)」の3区分に分けて申請・保管します(規則第5条第3項)。雑品スクラップには最も厳しい基準がかかります。
適用除外は、国・地方公共団体が行うものと、港湾法の荷さばき施設・保管施設で行うものです(条例第26条)。また、独自条例を持つ千葉市と袖ケ浦市の区域には県条例は適用されず、それぞれの市条例が適用されます(条例第27条)。
規制の仕組み
| 項目 | 内容 | 根拠 |
| 事業の許可 | 事業場ごとにあらかじめ知事の許可。有効期間・更新の定めはない | 条例第8条 |
| 住民への周知 | 申請前に、敷地境界から水平距離300メートル以内の住民に対し説明会を開催(原則)。書面配布や掲示+インターネット公開は例外的手段 | 条例第7条、規則第3・4条、指導要綱第12条 |
| 事前協議 | 申請前に事前協議書を提出。関係市町村長の意見聴取、現地調査、協議会審査、審査指示への対応を経て終了通知 | 条例第22条、指導要綱第4〜16条 |
| 事業場の基準 | 保管場所の周囲に囲い。荷重がかかる囲いは構造計算で構造耐力上安全を証明。油の流出・地下浸透のおそれがある場合は底面をコンクリート等の不浸透性材料で覆い、排水溝と油水分離装置を設置 | 条例第9条第2号 |
| 保管物の高さ | 金属スクラップ・プラスチック類:囲いの下端かげ50パーセント勾配(勾配比1対2)で立ち上がる面を超えない。囲いに荷重がかかる部分は囲い上端から50センチメートル下の基準線以下。雑品スクラップ:上記に加え最高5メートル | 条例第11条第2号、規則第6条 |
| 火災防止 | 雑品スクラップについて、電池・潤滑油等の回収・処理、保管単位1か所200平方メートル以下、隣接する保管単位の間隔2メートル以上(仕切りがあれば不要) | 条例第11条第3号、規則第7条 |
| 汚水・悪臭・騒音振動 | 汚水の飛散・流出・地下浸透と悪臭の防止、騒音・振動による支障の防止。早朝・夜間の搬出入・破砕等の制限を標準作業書に記載 | 条例第11条第4・5号、審査基準 |
| 現場責任者 | 事業場ごとに配置。不在時の代理者も申請書に記載 | 条例第16条 |
| 標識 | 縦横90センチメートル以上。許可番号、事業者名、平面図、区分、最高高さ、現場責任者の連絡先等 | 条例第14条、規則第11条 |
| 取引台帳 | 取引日・相手方・種類・数量を記載。1年ごとに閉鎖し、3年間保存 | 条例第15条、規則第12・13条 |
| 変更 | 構造・設備・保管場所・高さ・破砕等の変更は変更許可。面積の縮小や機械の減少など軽微な変更、氏名・役員・現場責任者の変更は30日以内に届出 | 条例第12条、規則第8・9条 |
| 廃業等 | 廃止・死亡・合併・解散から30日以内に届出。残置する保管物の取扱方針と現場写真を添付 | 条例第13条 |
| 命令・処分 | 保管方法の変更命令、措置命令(無許可者にも)、許可取消し、6月以内の事業停止命令。報告徴収と立入検査 | 条例第17〜21条 |
| 欠格要件 | 拘禁刑以上の刑から5年未経過、条例違反の罰金から5年未経過、取消しから5年未経過、暴力団員等、暴力団が支配する者、役員に該当者がいる法人など。県警本部長への意見聴取あり | 条例第9条第3号、第23条 |
| 手数料 | 新規許可56,000円、変更許可31,000円(千葉県収入証紙) | 条例第25条、附則第4項 |
| 罰則 | 無許可営業・不正取得・命令違反:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。届出・報告・立入検査の違反:30万円以下の罰金。法人両罰 | 条例第29〜31条 |
| 土地所有者の責務 | ヤード用地を貸す際は、借り手が適正に事業を行えるか確認する努力義務 | 条例第4条 |
経過措置と施行後の状況
施行時(令和6年4月1日)に現に事業を行っていた者は、施行から1年間(令和7年3月31日まで)は許可なしで営業でき、その期間内に許可申請をしていれば処分があるまで引き続き営業できました(条例附則第3項)。この猶予期間はすでに終了しており、現在は既存・新規を問わず、許可なしに営業すれば無許可営業です。
| 時点 | 県内ヤード数 | 県条例の対象 | 事前協議受付 | 許可申請受付 | 許可件数 | 廃業等予定 |
| 令和7年2月28日 | 531か所 | 425か所 | 291件 | 18件 | 2件 | 122か所 |
| 令和8年10月2日 | – | – | – | – | 197件 | – |
出典:環境省審議会 千葉県提出資料、千葉県 許可事業一覧(令和8年10月2日現在)。許可件数は一覧に掲載された許可番号の数です。
許可が2件から197件に増えた一方で、申請済みで審査中の事業場と、廃業を選んだ事業場が多数あることが読み取れます。審査の標準処理期間は90日ですが、その前の事前協議に数か月から年単位の時間がかかっていることが、この数字の背景にあります。
許可申請の実務:事前協議から許可まで
千葉県の許可は「申請書を出して審査を待つ」手続きではありません。申請の前に、指導要綱に基づく事前協議と住民説明会を終えている必要があり、実務上はここが最大の山です(出典:許可の申請、事前協議、事前協議に関する指導要綱)。
手続きの流れ
- 該当判定と他法令の整理:扱う物品の区分(金属・プラ・雑品)、使用機械、屋外かどうかを確認します。あわせて農地転用、都市計画法の開発許可、森林法、消防(指定可燃物・危険物)、騒音・振動規制法の特定施設届、水質汚濁防止法などの要否を洗い出します(出典:他の法令等に係る事前手続と問合せ先)。
- 事前協議書の提出(指導要綱第4条):事業計画の概要、位置図・見取図、平面図・立面図・断面図・構造図・設計計算書、登記事項証明書・公図、土地の権原を証する書類、標準作業書を添付します。別紙で用途地域、農地面積、危険物の種類と量、排水の放流先、埋蔵文化財の照会状況など15項目を申告します。電子申請は使えません。
- 県の審査:県は関係市町村長に意見を聴き、必要に応じて現地調査を行い、千葉県特定再生資源屋外保管業協議会の審査に付します。その結果、留意事項や変更すべき事項が「審査指示」として示されます。
- 関係機関との調整:申請者は審査指示を満たすための調整を自らの責任で行い、「審査指示調整報告書」を提出します。県は関係機関に照会して内容を確認し、不十分なら再調整を指示します。
- 住民説明会(条例第7条、規則第3・4条):敷地境界から300メートル以内に居住する住民を対象に説明会を開きます。開催日時・場所は事前に郵便受けへの投函、現地掲示、自治会回覧などで周知し、事業者名、所在地と敷地面積、構造・設備、区分、高さ、破砕等の種類、開始予定日、現場責任者を説明します。天災や第三者による妨害で開催できない場合に限り、書面配布や掲示+インターネット公開で代替できます。
- 住民周知実施報告書の提出:開催状況、出席状況、質疑応答の内容、配布資料を添えて報告します。周知が不十分と判断されると再実施を指示されます。審査基準では、周知が不十分な場合は不許可事由にあたると明記されています。
- 事前協議終了通知:審査指示調整報告書と住民周知実施報告書がそろうと、県から終了通知が出ます。
- 許可申請(条例第8条):窓口持参(正本1部、副本2部)または「ちば電子申請サービス」。手数料56,000円は千葉県収入証紙(貼付せずに持参)または電子納付。押印は不要です。受付は開庁日の9時〜12時、13時〜17時。
- 審査と許可:標準処理期間は90日。県は暴力団関係の欠格事由について千葉県警本部長の意見を聴きます(条例第23条)。許可には条件や期限が付されることがあります。
- 許可後:標識の掲示、取引台帳の作成、現場責任者の配置、基準の維持、変更時の許可・届出。
許可申請の添付書類(規則第5条第2項)
| 書類 | 備考 |
| 住民への周知を講じたことを証する書面 | 事前協議段階の住民周知実施報告書が基礎になる |
| 事業計画の概要 | 県が記載例を公開 |
| 位置図・付近の見取図 | 300メートルの周知範囲の確認にも使う |
| 平面図・立面図・断面図・構造図・設計計算書 | 囲いの構造耐力、底面の不浸透性、排水勾配、油水分離装置の容量を図面で示す |
| 土地の登記事項証明書・公図の写し | |
| 所有権または使用権原を証する書類 | 借地なら賃貸借契約書等 |
| 住民票の写し(法人は定款と登記事項証明書) | |
| 欠格要件に該当しないことの誓約書 | 県の様式 |
| 役員の住民票の写し | 法人の場合 |
| 5パーセント以上の株主・出資者の住民票の写し(法人株主は登記事項証明書) | 法人の場合 |
| 未成年者の法定代理人の住民票の写し | 該当する場合のみ |
| 標準作業書 | 事業場の維持計画、油水分離装置・排水溝の管理、電池・潤滑油等の回収処理、汚水・悪臭防止、騒音・振動防止の方法。県が記載例を公開 |
審査基準は、保管場所ごとに「区分」「高さ規定の適用関係」「作業方法と手順」「囲いの直接負荷部分の有無」「保管できる最高の高さ」を書類と図面で定めていることを求めます。標準作業書は常備し、従業者への教育を行うことまでが基準です。
窓口
千葉県環境生活部ヤード・残土対策課 金属スクラップヤード対策班(千葉市中央区市場町1-1 県庁本庁舎4階、電話043-223-3275)。千葉市内の事業場は千葉市環境局産業廃棄物指導課、袖ケ浦市内は袖ケ浦市環境部が窓口です。
他自治体の動向:条例は「許可制」が主流に
金属スクラップ系のヤード条例は、令和3年の千葉市を皮切りに首都圏を中心に広がり、環境省の集計で少なくとも5県8市が制定済みです。かつての届出制・罰則なしの条例から、許可制・罰則付きへと明らかに強化されています。自動車盗難対策を目的とする「自動車ヤード条例」(千葉県・茨城県・埼玉県・愛知県・三重県・群馬県等)は別系統の条例で、混同しないよう注意が必要です。
| 自治体 | 条例名 | 施行日 | 方式 | 千葉県条例との主な違い |
| 千葉市 | 千葉市再生資源物の屋外保管に関する条例 | 令和3年11月1日 | 許可(全国初) | 敷地100平方メートル超が対象。住宅等から100メートル以上の立地基準。高さは全区分で勾配1対2または5メートルの低い方。許可期間は5年で更新制。審査手数料25,000円。木材・ゴム・ガラス・コンクリートも対象 |
| 袖ケ浦市 | 袖ケ浦市再生資源物の屋外保管に関する条例 | 令和5年4月1日 | 許可 | 千葉市とほぼ同構造。100平方メートル超、住宅等から100メートル以上、みなし許可5年 |
| 茨城県 | 茨城県再生資源物の屋外保管の適正化に関する条例 | 令和6年4月1日 | 許可 | 千葉県と同時期に施行 |
| さいたま市 | さいたま市再生資源物の屋外保管に関する条例 | 令和6年2月1日 | 許可 | |
| 越谷市 | 越谷市再生資源物の屋外保管に関する条例 | 令和6年7月1日 | 許可 | |
| 常陸大宮市 | 常陸大宮市再生資源物の屋外保管に関する条例 | 令和6年4月1日 | 許可 | |
| 山梨県 | 山梨県再生資源物の不適正保管等の防止及び産業廃棄物の適正管理の促進に関する条例 | 令和6年7月1日 | 届出(300平方メートル以上等) | 届出制を採用 |
| 埼玉県 | 埼玉県特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例 | 令和7年1月1日 | 許可 | 条例名・構造とも千葉県型 |
| 福島県 | 福島県特定再生資源物の屋外保管の適正化に関する条例 | 令和7年1月1日 | 許可 | |
| 川口市 | 川口市資材の適正な屋外保管に関する条例 | 令和7年10月1日 | 許可 | 資材置場条例を全面改正 |
| 羽曳野市 | 羽曳野市再生資源物の屋外保管に関する条例 | 令和8年4月1日 | 届出(罰則なし) | 関西で初の例 |
| 群馬県 | 群馬県再生資源物の屋外保管等の規制に関する条例 | 令和8年10月1日 | 許可 | 100平方メートル超が対象。許可は5年更新。既存事業者は令和9年3月31日までの届出でみなし許可。罰則は拘禁儑2年または罰金100万円以下。手数料は新規56,000円、更新48,000円、変更46,000円 |
出典:地方自治研究機構 ヤード条例一覧(令和7年12月26日更新)、千葉市 再生資源物の屋外保管に関する条例、袖ケ浦市 再生資源物の屋外保管に関する条例、群馬県 再生資源物の屋外保管等の規制に関する条例、環境省 法律案参考資料。
千葉市では「みなし許可」の期限が目前
千葉市条例の施行日(令和3年11月1日)に許可を受けたものとみなされた既存事業者は、令和8年10月31日に許可期限を迎えます。更新申請をしないまま期限が切れると新規許可扱いとなり、住宅等から100メートル以内の事業場は立地基準を満たせず、令和8年11月1日以降は屋外保管ができなくなります(出典:千葉市 許可の更新についての案内)。千葉市内のクライアントには、この点を最優先で確認する必要があります。
似た名前の別制度:「ストックヤード運営事業者登録制度」との違い
国土交通省の「ストックヤード運営事業者登録制度」は、建設発生土(土砂)の置き場を対象とする任意の登録です。本記事で扱う金属スクラップヤードの許可とは、対象物も根拠も窓口も異なり、一方を取得してももう一方の代わりにはなりません。どちらも「ストックヤード」と呼ばれるため、相談の入口で混同しやすい点に注意が必要です。
| 項目 | ストックヤード運営事業者登録制度 | 金属スクラップヤードの許可 |
| 対象物 | 建設発生土(土砂)。土質改良プラントや自社の資材置き場も含む | 使用済みの金属・プラスチック製品とその端材 |
| 根拠 | ストックヤード運営事業者登録規程(令和5年国土交通省告示第157号、令和5年3月3日) | 千葉県特定再生資源屋外保管業規制条例、令和8年改正廃棄物処理法 |
| 義務か任意か | 任意。登録しなくても罰則はない | 義務。無許可営業には罰則 |
| 窓口 | 本社所在地を管轄する地方整備局。千葉県は関東地方整備局 建政部 建設産業第一課 | 千葉県 ヤード・残土対策課 金属スクラップヤード対策班 |
| 有効期間 | 5年で更新。登録料は無料 | 千葉県条例は期限なし。国の新制度は更新制の見込み |
| 登録・許可後の主な義務 | 受領書の交付、搬出先の事前確認、最終搬出先までの確認、記録の5年保存、国への年1回の年報、登録票の掲示 | 基準の遵守、現場責任者の配置、標識の掲示、取引台帳の3年保存 |
登録制度ができた理由とメリット
令和3年7月の熱海市の土石流災害を受け、盛土規制法の施行と、資源有効利用促進法の省令改正による建設発生土の搬出先計画制度の強化が行われました。令和6年6月からは、500立方メートル以上の土砂を搬出する工事の元請業者に、土砂の最終搬出先までの確認が義務付けられています。
土砂を登録ストックヤードに搬出した場合は、その先の確認を登録事業者が引き継ぐため、元請業者は最終搬出先までの確認が不要になります。登録していない置き場を使う場合は、搬入元ごとに土砂を区分管理してもらう必要があります。この元請側の負担軽減が、登録事業者が元請業者や発注者から選ばれやすくなる理由です。国の資料では、全国で約1,000者が登録されています。
許可との接点は「土砂の置き場」の側にある
国の運用では、盛土規制法や自治体の土砂条例で許可・届出が必要なのに取得していない置き場は、登録できません。千葉県では、いわゆる残土条例(千葉県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例)の「一時たい積特定事業」の許可がこれに当たります。他の場所へ搬出する目的で土砂を積み置く事業で、積み置いた土砂は原則として5年以内に搬出することが前提です。窓口は金属スクラップと同じヤード・残土対策課ですが、担当は残土・再生土対策班(電話043-223-2641)です。面積1万平方メートル未満の事業は各地域振興事務所が担当し、市町村によっては県条例ではなく市町村の条例が適用されます。
つまり、金属スクラップヤードの許可と登録制度は直接には結びついていません。登録制度と結びつくのは、土砂の置き場に関する盛土規制法や残土条例の許可です。
一つの土地で両方を扱う場合
解体工事業者や建設会社の資材置き場では、土砂と金属スクラップを同じ敷地に置いている例があります。その場合、制度ごとに別々の手続が必要です。
- 金属・プラスチックのスクラップを置く部分:千葉県条例の許可が必要です。将来は改正廃棄物処理法の許可も必要になります。
- 土砂を一時的に置く部分:規模に応じて残土条例や盛土規制法の許可・届出が必要です。そのうえで、希望すれば国の登録を受けられます。
- 廃棄物に当たる物:どちらの制度の対象でもなく、廃棄物処理法の許可の問題になります。
ご相談で「ストックヤード」という言葉が出たときは、まず「何を、どれだけの面積に、何のために置いているか」を確認することが、手続の取りこぼしを防ぐ第一歩です。
出典:国土交通省 制度チラシ(令和7年3月版)、国土交通省 FAQ、登録規程の補足説明及び運用、関東地方整備局 登録制度・申請について、千葉県 残土条例の審査基準(一時たい積)、千葉県 残土・再生土条例チラシ。
事業者が今すぐ確認すべきチェックポイント
- ☐ 該当性:屋外で、油圧ショベル・揚高3メートル超のフォークリフト・クレーンを使って、使用済みの金属・プラスチック製品や端材を保管していないか。千葉県条例に面積の下限はない。
- ☐ 所在地:千葉市・袖ケ浦市なら市条例、それ以外の千葉県内なら県条例。千葉市のみなし許可事業者は令和8年10月31日が期限。
- ☐ 許可の有無:県条例の猶予期間(令和7年3月31日)は終了済み。申請もしていなければ無許可営業の状態。1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、措置命令の対象。
- ☐ 区分の整理:金属だけ・プラだけ・それ以外(雑品)を保管場所ごとに分けているか。雑品は高さ5メートル以下、保管単位200平方メートル以下、間隔2メートル以上、電池・油類の回収が必要。
- ☐ 囲いと高さ:保管場所の全周に囲いがあるか。保管物が囲いにもたれかかる構造なら構造計算書が要る。囲い下端から50パーセント勾配の面を超えて積んでいないか。
- ☐ 底面と排水:油の付着した物を扱うならコンクリート舗装、排水勾配、排水溝、油水分離装置があるか。雨水量も見込んだ容量か。
- ☐ 欠格要件:役員・5パーセント以上の株主・法定代理人に、拘禁刑以上の刑から5年未経過の者や暴力団関係者がいないか。県警への照会が入る。
- ☐ 土地の権原:登記事項証明書・公図、借地なら賃貸借契約書を揃えられるか。農地や市街化調整区域なら農地転用や開発許可の問題が先に来る。
- ☐ 近隣関係:300メートル以内の住民への説明会に耐えられる操業実態か。早朝・夜間の作業制限を標準作業書に書けるか。
- ☐ 現場責任者・標識・台帳:許可後の義務を担う人と仕組みがあるか。取引台帳は3年保存。
- ☐ 国の許可制への備え:2028年12月までに施行される改正廃棄物処理法では、経理的基礎や帳簿も許可要件になる見込み。決算書類と取引記録を整えておく。バーゼル法対象品(鉛蓄電池、電子スクラップ等)の輸出は環境大臣の確認が必要になる。
- ☐ 土地オーナー側:ヤード用に土地を貸す場合、借り手の許可取得状況を確認する努力義務がある(条例第4条)。賃貸借契約に許可取得を条件とする条項を入れることを検討。
まとめ:行政書士(当事務所)がお手伝いできること
ストックヤード規制は「条例の時代」から「法律の時代」へ移りつつあります。千葉県ではすでに許可なしに営業できない段階にあり、2028年までには全国で同じ状況になります。一方で、許可を取得した事業者は、不適正ヤードとの価格競争から解放され、元請けや輸出先からの信頼を得やすくなります。規制をコストではなく参入障壁として活かす発想が大切です。
許可申請の実務は、書類作成よりも「事前協議と住民説明をどう乗り切るか」「図面と標準作業書を審査基準にどう合わせるか」「農地・都市計画・消防など他法令をどう同時進行するか」に難しさがあります。当事務所では次のサポートを行います。
- 該当判定と現状診断:現地を拝見し、条例・規則・審査基準に照らして不足点を洗い出します。
- 事前協議書・許可申請書の作成と提出代理:事業計画の概要、標準作業書、誓約書、各種証明書の取得。図面・設計計算書は建築士・設計事務所と連携します。
- 住民説明会の設計と運営支援:対象範囲の確定、案内文と説明資料の作成、議事記録、住民周知実施報告書の作成。
- 他法令手続の並行対応:農地転用、開発許可、消防届出、騒音・振動特定施設届など。
- 許可後の維持管理:変更許可・変更届・廃業届、取引台帳の整備、立入検査への対応。
- 国の新許可制への移行準備:政省令の動向を追い、施行前に申請書類を整えます。
記事の内容は2026年10月22日時点の公開資料に基づきます。国の改正法の政省令は未公布です。個別の案件では必ず最新の条文と官庁の運用を確認してください。
参考資料・出典一覧
千葉県(すべて公式)
- 金属スクラップヤード等規制条例(条例の概要ページ)
- 条例本文(令和5年千葉県条例第30号)
- 施行規則(令和5年千葉県規則第71号)
- 許可申請に係る審査基準
- 事前協議に関する指導要綱
- 特定再生資源屋外保管業の手引
- 手続・申請の案内、許可の申請、事前協議
- 他の法令等に係る事前手続と問合せ先
- 許可事業一覧(令和8年10月2日現在)
- 環境省中央環境審議会への千葉県提出資料「金属スクラップヤード等対策について」(令和7年3月7日)
国(環境省・国会)
- 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案」の閣議決定について(令和8年4月10日)
- 法律案の概要、法律案要綱、新旧対照条文、参考資料
- 参議院 議案情報(第221回国会 閣法第59号)
- 環境省 廃棄物等の処理(有害使用済機器保管等届出制度)
- 宮城県 有害使用済機器(通称「雑品スクラップ」)規制について
他自治体
- 千葉市 再生資源物の屋外保管に関する条例、許可の更新についての案内
- 袖ケ浦市 再生資源物の屋外保管に関する条例
- 群馬県 再生資源物の屋外保管等の規制に関する条例、報道提供資料
- 地方自治研究機構 自動車ヤード・スクラップヤード・資材置場条例一覧
報道・解説(参考)
- 日刊産業新聞 環境省 ヤード規制 詳細検討着手(2026年7月28日)
- ニュースイッチ 金属スクラップ保管ヤード問題、自治体で規制条例相次ぐ(2024年4月)
- DOWAエコジャーナル 廃棄物処理法の改正案を解説
土砂のストックヤード(参考)
- 国土交通省 ストックヤード運営事業者登録制度 チラシ(令和7年3月版)
- 国土交通省 ストックヤード運営事業者登録規程(令和5年告示第157号)、補足説明及び運用、FAQ
- 関東地方整備局 ストックヤード運営事業者の登録制度・申請について
- 千葉県 残土条例に基づく許可申請に係る審査基準(一時たい積、令和7年5月)
- 千葉県 残土・再生土条例のチラシ
記事中の条文番号・数値は、千葉県の条例・規則・審査基準・指導要綱の本文、および環境省の法律案要綱・参考資料から直接確認したものです。千葉市・袖ケ浦市・群馬県の数値は各市県の公式ページおよび公式案内文書によります。
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