壁芯図面と内法図面|住宅宿泊事業で特に重要なポイント(宿泊室・居室などの定義) 

住宅宿泊事業(いわゆる民泊)の申請や届出において提出する図面には、「壁芯面積」と「内法面積」のどちらを記載するかが非常に重要です。これを混同すると、対象自治体の審査で差し戻しになったり、消防・保健所との調整に乖離が生じたりします。わかりにくい論点ですので、以下に整理して解説します。

旅館業であれば、すべて内法を使うのが原則で、なかなか、理解できない論点ですが、できる限りわかりやすく解説していきます。


1. 壁芯面積と内法面積の違い

  • 壁芯面積(へきしん・かべしんめんせき)
    壁の中心線を基準にして算出する面積。
    → 建築基準法・不動産取引(登記簿・パンフレット等)でよく用いられる。
    → 実際の使用可能面積よりもイメージ上、広く表記される傾向があります。
  • 内法面積(うちのりめんせき)
    壁の内側の「実際に使える空間」で算出する面積。
    → 旅館業法、住宅宿泊事業法に基づく面積要件(居室の広さ基準等)はこちらが基準


2. 民泊(住宅宿泊事業)図面での定義

通常、建物登記簿謄本の面積と一致します。建築上の面積表示は一般的に壁芯面積を用いますが、住宅宿宿泊事業では、定員算定などには内法面積面も必要となり、具体的には、以下のように考えます。

(1) 居室面積 (内法面積)

宿泊者が占有する面積のことを表します(宿泊者の占有する台所、浴室、便所、洗面所、廊下等であって、押入れや床の間は含みません。)。具体的には、簡易宿所の取扱いと同様に算定します。なお、内寸面積(壁の内側、実際の壁から壁までの距離を対象とした面積)で算定します。

居室の表記の例です。基本的に旅館業法の有効面積の考え方に基づいているので、内法面積を計算します。定員算定に用います(3.3㎡あたり定員1名)

※当事務所で作成する図面は、このように内法寸法を記載するようにしています。

(2) 宿泊者の使用に供する部分、宿泊室 (壁芯面積)

  • 宿泊室:宿泊者が就寝するために使用する室の面積を表します(宿泊室内にある押入れや床の間は含みません)。なお、面積の算定方法は壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積(建物を真上から見た面積)とします。
  • 宿泊者の使用に供する部分(宿泊室を除く。):宿泊者の占有か住宅宿泊事業者との共有かを問わず、宿泊者が使用する部分の面積であり、宿泊室の面積を除いた面積を表します(台所、浴室、便所、洗面所のほか、押入れや床の間、廊下を含みます。)。なお、面積の算定方法は「宿泊室の面積」の場合と同様、水平投影面積です。

宿泊室などの表記例です。基本的に旅館業法の有効面積の考え方に基づいているので、内法面積を計算します。

※当事務所で作成する図面は、このように内法寸法を標記しています。

(3) 図面の信頼性・透明性

  • 管轄自治体の審査では「壁芯」と「内法」を住宅宿泊事業上の上面に応じ明確に区別して記載することで、
    • 不動産表示や登記簿面積との整合性(原則は壁芯)
    • 実際の利用面積、定員の算定(内法)
      の両方を明示でき、審査がスムーズになります。

(3) 消防・保健所との整合性

  • 消防署のヒアリング、届出の際の面積は、住宅宿泊事業との整合性が必要となります(消防法(各自治体の火災予防省令)上の定員と住宅宿泊事業の定員が必ずしも一致しない場合もあります)

3. 実務上の対応例

  • 提出図面には両方の面積を算定し明記するのがベスト。
    • 例:居室 21.56㎡(壁芯)、宿泊者の使用に供する部分25㎡(内法)
  • 人数基準や設備基準の説明資料では 必ず内法面積を根拠にする。※定員は3.3㎡あたり1名です。
  • 図面に「面積算定基準」を付記しておくとよいでしょう。

まとめ

住宅宿泊事業における図面では、

  • 建築的な面積表示 → 壁芯面積
  • 法令上の有効利用面積 → 内法面積
    と役割を分けて使い分けることが不可欠です。

申請(届出情報送信)時に内法面積を明示しなかった場合、定員算定や法令適合性に誤りが生じるため、審査段階での指摘や差し戻しにつながります。したがって、図面には両方を記載し、特に「内法面積」が法令上の根拠となることを明確に示すことが重要です。

住宅宿泊事業法の施行からかなりの年数が経過しましたが、近年、図面等の整合性が問題になってきています。当事務所では、特に正確な図面の正確に力を入れておりますので、届出図面でお困りの方は是非お気軽にお問合せください。

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