法人解散|一般社団法人の解散について

一般社団法人の解散手続きの流れ

今回は、法人の解散の流れを一般社団法人を例に解説します。

1. 解散事由の発生

一般社団法人は以下のいずれかの事由により解散します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第148条)。

●主な解散事由

  1. 定款に定めた解散事由の発生
  2. 社員総会による解散決議
  3. 目的の達成または達成不能
  4. 社員が欠けた場合(最低1人必要)
  5. 合併(合併により消滅)
  6. 破産手続開始の決定
  7. 裁判所の命令または判決

2.解散の議決権について

一般社団法人が社員総会の決議により解散する場合、解散は重大な事項のため、特別決議が必要です。

特別決議の要件(法第49条第2項)

社員総会での解散決議には、以下の要件が必要です:

社員総会において、総社員の半数以上が出席し、その出席社員の3分の2以上の賛成

※ 定款でこれより厳しい要件を定めることはできます(緩和は不可です。)。

解散決議時の議決権の基準

  • 議決権の数は、社員1人につき1票が原則(法第11条)・・・原則は出資した割合ではありません。ただし、定款で異なる定めをすることができます(例:議決権の比率を変更)

補足:理事・監事は議決権を持たない

  • 理事や監事などの役員は社員とは別の立場です。
  • 社員でなければ、議決権を持ちません
  • 役員でも「社員」であれば議決権を持ちます。

※社員とは、法人を構成し、社員総会において議決権を行使する構成員で、一般社団法人を設立する際には、設立時社員2人以上が定款を作成、署名又は記名押印する必要があります。 ここでいう設立時社員は、株式会社の設立時の『発起人』に相当します。


3.解散の登記

解散決議または解散事由が発生した日から2週間以内に、主たる事務所の所在地を管轄する法務局に「解散登記」を申請します。

※解散登記:解散が議決されたら、法人解散・清算人選任の登記をする必要があります。 解散登記を行うことで、解散手続きに入っていることを取引先などに広く知らせることができます。 解散の手続きは、清算人が中心になって進められます。

必要書類(社員総会での決議による解散の場合)

  • 解散登記申請書
  • 解散を決議した社員総会の議事録(原本)
  • 理事の印鑑証明書(必要に応じて)
  • 登録免許税:3万円

4.清算人の選任・登記

解散後は、法人の財産を清算するために「清算人」を選任します。

  • 原則:通常は理事が自動的に清算人になります
  • 社員総会で別に清算人を選任することも可能

清算人を選任したら、清算人の就任登記を行います。清算人は誰でも就任可能です(法律上、資格制限は特にありません。)。

  • 当該法人と関係のない人でも可
  • 理事や社員などの関係者でなくてもよい
  • 複数人可 ※法人も可能ですが、その法人が適切な代表者を通じて行える体制が必要

ただし、以下の点に注意が必要です。

清算人に適任は?

  • 現理事、社員:法人の現理事などの役員や社員(通常はそのまま清算人になる)
  • 従業員など:元社員や経理担当者(内部事情に精通している人)
  • 専門家:事務作業・報告・官報公告などに責任を持てる士業など

※士行に依頼する場合は、清算人として就任を依頼し全権を委任する場合や、個別の手続きごとに依頼する場合(その場合は、手続きは各士業の資格の種類に応じで対応できない場合があります。例えば司法書士は登記申請が独占業務ですが、税務代理はできないなど。)、または、アドバイスやコンサルティングとしてかかわる場合など、さまざまですが、清算人として登記されていなければ、全権委任はできないので、都度、委任状などが必要となります。

清算人登記に必要なもの

  • 清算人の就任承諾書
  • 清算人の印鑑証明書
  • 社員総会の議事録(清算人選任の場合)
  • 登記申請書

帳簿整理・決算手続きや移転登記などを怠っている場合

  • 役員辞任や本店移転など変更があったにもかかわらず怠っている場合などは、ます、登記を正しい情報に変更
  • 確定申告や税金未納等、過去に不備がないか調べ、これも修正するなど、その他未払の債務などはできるだけ清算の決議前に整理しましょう。

5.債権者保護手続(官報公告)

清算人は、法人の債権者に対して債権の申出を公告する必要があります。

  • 官報に公告(最低1回)
  • 申出期間:2ヶ月以上

公告期間中に債務を確認し、債務を弁済後、残余財産の分配を行います。ちなみに残余財産は、株式会社のように、出資者にほぼ無条件に分配されるのが原則ではありません。定款や解散の決議時の目的に従い分配や他の事業や法人に出資などが行われます。

(残余財産の帰属)

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第239条

1.残余財産の帰属は、定款で定めるところによる。

2.前項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、その帰属は、清算法人の社員総会又は評議員会の決議によって定める。

3.前二項の規定により帰属が定まらない残余財産は、国庫に帰属する。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第239条

6.清算結了登記

財産の清算が完了したら、清算人は清算結了の登記を行います。

必要書類:

  • 清算結了登記申請書
  • 清算結了報告書(社員総会の承認を得たもの)
  • 清算人の印鑑証明書
  • 登録免許税:2,000円

解散手続の所要期間

目安としては以下の通りです:

手続き期間の目安
解散〜解散登記約1〜2週間
清算期間(公告含む)最低2ヶ月以上、債権者集会などあればより時間がかかる。
清算結了〜登記約1〜2週間

今回は、標準的な一般社団法人清算の一例としてご参考までにご覧いただけますと幸いです。ご質問、ご依頼等はお問合せ欄からお願いいたします。