豊島区の旅館業法施行条例改正:旅館業フロント必須へ

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豊島区で令和8年12月16日以降に旅館業の許可を申請する場合、営業従事者の常駐とフロント(玄関帳場)の設置が必須になります。マンションの一室で営業する、いわゆる「一部屋旅館」の新規開業は、これまでの方法では難しくなります。

区は令和8年9月17日に改正条例を公布しました。事前周知や指導・公表に関する規定は、すでに同日から施行されています。

今回は、区が公表した条例と規則の新旧対照表をもとに、改正の要点と既存施設への影響を整理しました。本記事は旅館・ホテル営業を対象としています。

豊島区の旅館業はなぜ規制強化されたのか

一部屋旅館への苦情が、令和7年度に117件と前年度の6倍に増えたことが直接のきっかけです。内容はゴミ、騒音、タバコのポイ捨てなどで、区のプレスリリースが明らかにしています。

平成30年の規制緩和で、旅館業の客室数の要件はなくなりました。カメラによる出入りの確認と駆け付け体制があればフロントを省略できたため、従業者が常駐しない一室だけの営業が可能になっていました。区はパブリックコメントの資料で、この点を許可申請が増え続ける要因に挙げています。東京新聞によると、区内の一部屋旅館は2025年度末で510件、前年度から220件増えました。民泊の規制強化を受けて、旅館業へ切り替える事業者が相次いでいると報じられています。

いつから変わるのか 【施行時期】

規制の施行は2段階です。申請手続き等に関する規定は令和8年9月17日に施行済みで、常駐やフロントなどの本体は12月16日に施行されます。

施行日主な規定条文
令和8年9月17日(施行済み)許可申請の添付書類の変更第1条の2
令和8年9月17日(施行済み)事業計画の事前周知第1条の3
令和8年9月17日(施行済み)指導・助言、勧告・公表第10条の2、第10条の3
令和8年12月16日営業者の責務(常駐、標識、廃棄物、苦情対応など)第6条
令和8年12月16日旅館・ホテル営業の構造設備基準(フロント、常駐用設備など)第7条

12月16日は、民泊条例の区域・期間の制限が始まる日でもあります。民泊と旅館業の規制が同じ日に施行されます。

何が変わるのか

最も影響が大きいのは、常駐義務とフロントの設置義務です。これまでの「規則の要件を満たせばフロント不要」とするただし書きが削除され、カメラと駆け付けで代替する方法は新規申請では使えなくなります。

施設と人員配置

項目改正後の内容条文
常駐義務営業施設に営業従事者を常駐させる(営業者本人が常駐する場合を除く)第6条第2項
フロント営業施設内の利用しやすい位置に玄関帳場を設置第7条第1号
フロントの仕様カウンターを設け、宿泊者名簿の記載と鍵の受渡しを対面で行える構造第7条第2号
常駐用設備従事者用の便所と、専用の更衣室・休憩室等第7条第3号
ごみ集積所十分な数のごみ箱と、施設専用のごみ集積所または収集庫第7条第12号
サウナ室非常用ブザー、ラッチのない外開き扉、室内を見通せる窓、温度計第7条第7号

申請前の手続き

項目改正後の内容条文
事前周知許可申請の前に、周辺住民へ書面と説明会の両方で周知第1条の3
周知の範囲同一建物・同一敷地内の建物、敷地境界線から水帳20m以内の建物の居住者と事業者。公道に接しない場合は私道等に接する建物も対象規則第2条の2
書面の記載事項施設の名称・所在地、営業者の名称・住所・電話番号、営業の種別、説明会の日時・場所、申請と営業開始の予定日規則第2条の3
添付書類(用途変更)200㎡超は確認済証、200㎡以下は建築士による適合証明書、工事完了届規則第2条第2項
添付書類(周知・ごみ)事前周知の記録(周知先、説明会の資料と議事録、住民意見への対応)、廃棄物の収集運搬契約が確認できる書類規則第2条第2項

日々の運営について

項目改正後の内容条文
標識営業者名、管理者名、緊急時の連絡先、施設名称、営業の種別などを公衆の見やすい場所に掲示第6条第3項
廃棄物廃棄物処理法を守り、自らの責任で適正に処理第6条第4項
騒音・臭気発生を防止し、宿泊者に騒音防止やごみの出し方を説明第6条第5項・第6項
苦情対応速やかに対策を講じ、協議の場を求められたら誠実に対応。対応記録を3年間保管第6条第7項・第8項
国内代理人国内に住所のない個人や外国法人は、施設ごとに国内在住の代理人を選任第6条第1項
指導・勧告・公表区長が指導・助言、書面で勧告。勧告に従わない場合や営業停止・許可取消しの場合は、区ホームページ等で公表できる第10条の2、第10条の3、規則第14条

条文は区が公表した条例の新旧対照表と規則の新旧対照表によります。

既存施設はどうなるのか? 遡及適用の有無

すでに許可を受けている施設には、常駐義務とフロントの設置義務は適用されません。附則は、施行日前に許可を受けた施設と許可申請済みの施設を「既存営業施設」として、経過措置を定めています。

規定12月16日以降の新規申請既存営業施設根拠
常駐義務適用適用なし附則第2項
フロント、常駐用設備、ごみ集積所適用従前の基準のまま附則第3項
サウナ室、便所、階層式寝台適用従前のまま。施行日以後に増改築や大規模修繕をすれば新基準附則第3項
標識、廃棄物、騒音防止、苦情対応、国内代理人適用適用附則に経過措置なし
事前周知、新しい添付書類適用9月17日以後の申請から適用附則第4項

既存施設でも、標識の掲示や廃棄物の処理、苦情対応といった運営面の義務は12月16日から負うことになります。

(参考)住宅宿泊事業(民泊)の条例改正

民泊は、令和8年12月16日から区内全域で年間120日しか営業できなくなります。民泊条例は旅館業より先に改正されており、手続きのルールは令和7年12月15日に施行済みです。

項目内容
期間の制限実施できるのは春休み(3/15〜4/10)、夏休み(7/1〜8/31)、冬休み(12/15〜1/14)の年間120日。既存施設にも適用
区域の制限住居専用地域、住居地域、準工業地域、文教地区(区内の約70%)は全期間を制限。新規開設は不可
既存の届出住宅12月16日前に届出が受理された住宅は、区域の制限の対象外。年間120日の制限が適用される
罰則区域と期間の制限に違反した者は5万円以下の過料
手続きのルール周辺住民への事前説明会、海外在住事業者の国内代理人の選任、町会加入の協議、トラブル時の話し合いの場の設置
指導・監督指導、勧告、公表の規定を追加

区の検討会資料によると、届出住宅数は令和7年度末で1,859件、23区で3番目の多さです。苦情は令和7年度に234件で、前年度の120件からほぼ倍になりました。

民泊は営業日数と区域が絞られ、旅館業は新規申請に常駐とフロントが求められます。民泊から旅館業へ切り替えるという選択肢も、12月16日以降は同じ条件では取れなくなります。

制限の内容は区の改正概要と可決した主な条例の資料によります。

まとめ

豊島区では令和8年12月16日を境に、旅館業の新規開業に「人がいるフロント」が求められます。既存施設も、標識や廃棄物、苦情対応など運営面の義務は新たに負うことになります。

計画中の方は申請時期と事前周知の日程を、営業中の方は運営体制を、施行日までに見直しておくことをおすすめします。

本記事は令和8年10月9日時点で公表されている資料に基づいています。個別の案件への当てはめは、区の窓口または専門家にご確認ください。

出典

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