種子法廃止と農業競争力強化支援法制定の闇

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種苗法の改正など、現在の日本の農業を取り巻く環境は劇的に変化しています。農業は国の基幹産業であるとともに、実は安全保障の中核をなす産業とも言えます。前後70年以上、衰退はみられるものの、一定の自給率と精算額を維持しています。

図2-1 農業総産出額及び生産農業所得の推移
出展 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h27/h27_h/trend/part1/chap2/c2_0_01.html

これは、ひとえに個々の農業者、地域と国が一体となって、維持してきた成果であることは間違いないのですが、

近年になり、日本の農業を衰退させかねない、「種子法廃止(2018.4)」、「農業競争力強化支援法」制定など、多くの農業者や自治体もほとんど理解しない間に、様々な農業関連の法律の改廃がなされています。

種子法(主要農産物種子法)について

都道府県が農業試験場に予算措置をする根拠法であった法律で、昭和27年5月1日の制定以来日本の農業、とりわけ、米や大豆の供給を担ってきた法律ですが、2018年4月1につをもって廃止されています。

主要農作物種子法は、主要農作物=米、麦、大豆などの安定的生産のため、米、大豆、麦の種子の生産について審査や育成を行うことを目的として制定されましたが、その本来の目的は、安定的な作物の種の供給を都道府県に義務付けたものです。

しかし、2018年4月1日に廃止されたことに伴い、都道府県が、主要農作物の種子に予算を付け、責任をもって供給するという、法的な担保がなくなったことを意味します。

種子法全文を掲載しますが、たった7条しかない簡素な条文ですが、大変重要な法律でした。

種子法で都道府県が担っていたものは|優良な趣旨の提供

種子法の中で特に重要だったのは、第7条の「原種及び原原種の生産」です。

条文は以下の通りですが、

つまり、この条文自体が、都道府県が主要農作物の種子生産に予算を付け、責任をもって供給するという、法的な担保となっていましたが、

廃止されたということは、予算をかけて、原種、原原種を生産するという都道府県が担っていた機能が、法廷ではなく、任意になったということを意味します。

なぜ種子法が廃止されたのか?

以下、種子法廃止の流れです。2016年に「 規制改革推進会議 」で突然、種子法の廃止が浮上し、2年で廃止に待ちこまれました。議員や全農が、状況の深刻さを認識する前に廃止がなされたということです。

  1. 2016 規制改革推進会議農業WGで種子法廃止が提案
  2. 2017.4国会で種子法廃止を決定
  3. 2018.4種子法廃止
  4. 種子法廃止により、都道府県が米などの種苗の育成、予算措置の法的根拠がなくなった。

廃止の目的は様々で、「民間に行政が持っている知見を解放するため」とか「種苗法に役割を受け継ぐ」などど言われていますが、

事実として、農業、とりわけ主要農作物の分野に民間、特に外資の参入が容易になり、都道府県の種苗センターの役割は大きく低下しました。

そして、さらに追い打ちをかけるように、農業競争力強化支援法が制定されました。

農業競争力強化支援法の問題点|農業技術の海外流出を促進した

「 種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。」というのは、この法律の8条4項に書かれていますが、農業競争力強化支援法で最もおかしな条文がこの項目です。

(農業資材事業に係る事業環境の整備)

第八条 国は、良質かつ低廉な農業資材の供給を実現する上で必要な事業環境の整備のため、次に掲げる措置その他の措置を講ずるものとする。

一 農薬の登録その他の農業資材に係る規制について、農業資材の安全性を確保するための見直し、国際的な標準との調和を図るための見直しその他の当該規制を最新の科学的知見を踏まえた合理的なものとするための見直しを行うこと。

二 農業機械その他の農業資材の開発について、良質かつ低廉な農業資材の供給の実現に向けた開発の目標を設定するとともに、独立行政法人の試験研究機関、大学及び民間事業者の間の連携を促進すること。

三 農業資材であってその銘柄が著しく多数であるため銘柄ごとのその生産の規模が小さくその生産を行う事業者の生産性が低いものについて、地方公共団体又は農業者団体が行う当該農業資材の銘柄の数の増加と関連する基準の見直しその他の当該農業資材の銘柄の集約の取組を促進すること。

四 種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。

これ市、一見「官から民」へということてで、いっけん耳障りがよく聞こえますが、

「民」とは、日本企業だけでなく、世界企業であるモンサント・バイエル、デュポン・ダウ、シンジェンタなどの外資系の日本企業も当然含まれ、

これら穀物メジャーの大企業に技術や知見を流出するということは、世界中に日本が開発してきた70年の知見が流出し、しかもそれは法律で防ぐことができないということになります。

当然、これらの原種、原原種を利用した、新品種や現在登録されていない地方品種そのものが、まかり間違って、種苗法や他国の登録品種となれば、現在、普通に栽培しているコメや麦のためが種苗法の育成者権侵害となり、栽培できないどころが、多額の罰金や賠償責任のみならず、懲役刑を受ける可能性も出てきます。

こうした種苗登録を行った大企業が特許侵害ビジネスを仕掛けてくる可能性も十分考えられます。

種子法廃止、種苗法改正までの道のりは、周到に計画されていた

ちなみに時系列的に表すと、

  1. 農業競争力強化支援法制定2017.8.1施行
  2. 種子法廃止 2018.4.1
  3. 種苗法改正 2020年国会提出

となっていますが、これ以前の2015年に、全農(JAグループ)の急先鋒、つまり国への意見陳情を一手に担っていたJA全中を一般社団法人化することにより解体し、

農家の単体であるJAの力を大幅に削いだうえで、上記のほう解説を実行しています。

つまり、文句を言いそうな業界団体をまず最初に黙らせて、電光石火の勢いで法律を改廃するという「あらわざ」で、全農が大勢を整える前に、先手を打って、種子法を廃止してしまったというわけです。

世界の種子企業|穀物メジャー

日本には、種子(種苗)メーカーとして、住友化学、三菱化学、タキイ、サカタなどがありますが、

世界では、モンサント+バイエル、ダウ+デュポン、シンジェンタなどでほぼ寡占状態です。

世界
バイエル(モンサント=バイエル)17,351億円
コルテバアグリサイエンス(ダウ+デュポン)15,486億円
シンジェンタ14,645億円
BASF7,467億円
国内
サカタのタネ627億円
カネコ種苗585億円
タキイ種苗514億円

特にバイエル=モンサントのモンサントは、枯葉剤の開発メーカーとして有名で、特にグリホサートは強力な農薬で(ホームセンターやドラッグストアでも販売されています)、

通常種の販売と農薬の販売はセットで、つまり、農薬耐性を付けた、遺伝子組み換え、ゲノム編集などの種子を販売していて、これらの作物は、農薬をいくら使用しても枯れることはないため、農薬の使い過ぎが問題視され、事実、グリホサートの残留農薬濃度は飛躍的に増しています。

アメリカで生産される大豆やトウモロコシは、約90%以上が遺伝子組み換えであるといわれています。

枯葉剤グリホサートの危険性

グリホサートは枯葉剤であり、これは大豆や小麦に使用されていますが、アメリカなどでは、遺伝子組み換えにより大豆や小麦、トウモロコシに、グリホサート態勢を付け、散布しても雑草は枯れるけれども、農作物には影響がないようになっています。遺伝と組み換えの問題点は、一般的には、食べた場合の人の遺伝子への影響ですが、本質的な問題は、むしろ残留農薬の問題です。

発ガン性についてですが、様々な意見はありますが、

IARC(国際がん研究機関)がグリホサートを「おそらく発がん性がある」とされるの2Aのグループに分類しました(2015年)。これにより、例えば、米カリフォルニア州では訴訟がいくつも提起され、オーストラリア、EUで規制が強化、または強化の動きがあります。

アメリカなどの場合、小麦に対し農薬を散布する場合、生育中はもちろんてすが 収穫作業の効率化のために、収穫直前に散布します。これをプレハーベスト処理(プレハーベスト農法)といいますが、収穫前に農薬を撒くことで、商品としての小麦粉に大量の農薬が残留します。

近年の日本における輸入小麦からの高いグリホサートの残留農薬の検出率は、このプレハーベスト処理によるのは明らかです。

※グリホサートの詳細はこちら

なぜ種子法を廃止してはななかったのか?|まとめ

種子法廃止の一番の問題点は、種の供給元が絶たれるということです。都道府県の種子供給能力が失われるということは、

農業が民間の、とりわけ外資系のメーカーのコントロール下に置かれることを意味します。

こうしたことを懸念し、複数の都道府県が、種子法の代替として、独自の種子条例を制定し始めていますが、2020.3現在、13県にとどまっています。

年度
平成30年度施行 埼玉、新潟、兵庫、山形、富山
平成31年度施行 富山、北海道、岐阜、福井、宮崎
令和2年度施行 長野、宮城、栃木

この流れが全国に広がり、最終的に種子法が復活することを切に願います。


本記事の参考文献



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