今回は、投資用ローンと住宅ローンを活用した賃貸併用住宅のお話をしてみたいと思います。
住宅ローンは、文字通り自分で居住するためのローンであり、金利がとても安く、返済期間が長いのが特徴です。対して、アパートローンは投資向けで、返済期間はほぼ建物の耐用年数が限度となっています。
さて、投資用はアパートローンが主流です。
全額現金で建てる(購入する)場合は別として、多くの場合、アパートローンで建築資金を手当てすることになります。
アパートローンについは、次の通りです。
アパートローン
アパートローンとは、賃貸物件を建築・購入するためのローンで、不動産投資向けの事業用融資です。賃料収入からローンを返済していきますから、
- 物件の担保力
- 物件の収益性
- 申込者の属性
- 返済能力
一般的には、①とか②の物件が重要です。
以下、みずほ銀行のアパート論の条件を抜粋しました。
ご利用いただける方
以下のすべての条件を満たす個人のお客さま
- 満20歳以上の方
- 安定した収入のある方で、前年度税込年収200万円以上の方
→コメント:最低条件はそうですが、800万くらい年収かあった方がいいと思います。
資金使途
- (1)賃貸用住宅の土地・建物の取得資金、増改築・改装資金、底地買取資金および外構工事資金、火災保険料、担保関連費用、設計料、解体工事費用、近隣対策費、印紙税、仲介手数料、付帯工事費用、水道加入金
- (2)現在他金融機関からのお借入中のアパートローンの借り換え資金。ただし当行でお借り入れ中のアパートローンの借り換えはできません。
→コメント:当たり前ですが、物件の取得・工事用ということですね。
お借入金額
50万円以上5億円以内(1万円単位)
→なんと、最大5億円までかりられるんですね(ただし、条件次第)。
お借入期間
1年以上35年以内(1年単位)。ただし、建物の耐用年数内とさせていただきます。
- *固定金利選択方式は2年以上35年以内
- *全期間固定金利方式は11年以上20年以内
→コメント:アパートの場合は耐用年数などを勘案します。耐用年数がキーワードです。
※その他、いろいろ条件はありますが、みすほ銀行のリンクを掲載します。
耐用年数について
金融機関は法定耐用年数までの融資が基本で、法定耐用年数の短い構造の構築物は融資の返済期間が短いという深刻な問題が不動産投資の世界には存在します。
属性、収益性なども重要ですが、借入期間を決定する重要なファクターですから、耐用年数について説明して行きます。返済期間=耐用年数とすると、
一般的には、
工法 | 耐用年数 | |
RC(SRC)造 | 47年 | 鉄筋コンクリート造(Reinforced Concrete)、SRC造・・・鉄骨鉄筋コンクリート造(Steel Reinforced Concrete) |
S造 | 34年 | S造・・・・鉄骨造(Steel) |
木造 | 22年 | |
軽量鉄骨 | 19年(鉄の厚みによって27年(重量鉄骨)) |
となります。
鉄筋コンクリート(RC)イメージ
SRCイメージ
S造イメージ
税法上の耐用年数と同じですが、RC(SRC含)が一般的に好まれるのはこの法定耐用年数の長さです。
耐用年数が長い=返済期間が長い→投資物件として評価が高くなるというわけです。
特段RCが構造上優れているからではなく、(現に何百年と建っている木造建築物もあり、鉄筋コンクリートでも40年程度で建替えることもあります。)
耐用年数オーバーの物件を金融機関に持ち込むとどうなるか?というと、通常、短い期間の融資しか出ません。したがって、自己資金を用意する必要があるのです。
なお、耐用年数までしか貸さないということは、古い物件への融資を阻害し、実際は、十分収益が取れる物件なのに、融資がつかないということになります。
つまり、新築の物件が優遇されますから、古い物件の流通は阻害され、新しい物件のみが融資の世界では優遇されることとなります。実際は、古くても利便性のよい物件の方が不動産としては貸しやすいのですが、このような物件に価値を見出してくれる金融機関はごくわずかです。
賃貸経営とローンの活用法
賃貸経営を行う場合、とくに新築の場合、収益物件の建築を全て自己資金で賄うということはとても稀です。
金利も経費なので、多くの場合ローンを使います。ただし、月々のローン返済を考えると長い期間安定した収益が得られることが前提条件になります。したがって、その物件から得られる収益がローン返済額を下回るようなことになれば、当然ながら赤字になってしまいます。
収益が出ている際はその金額を貯めておき、空室が出た際の補填を行なったり、金利が高くなってきたときには返済期間を短縮する繰り上げ返済の実施なども視野に入れながら、長期的な視点でローンを上手く活用することが大切です。
重要なのは、満室で考えるのではなく、ゆとりを持って利益を計算し、十分ペイできる物件を取得することです。
また、儲かればすぐに次の物件という方もいますが、偶発的に発生する可能性があるリスクに備えたキャッシュを手元に貯めておきながら返済を続けることが、安定した賃貸経営のポイントです。なお、資産価値が上がれば、売却して値上がり分を収益化することも必要でしょう。
なお、居住しながら一部を貸すという「賃貸併用住宅」も面白い選択肢です。
賃貸併用住宅という方法
投資用物件を住宅ローンで手当てする方法とて「賃貸併用住宅」という選択があります。
住宅ローンで戸建てを購入、建築する場合でも、賃貸部分の面積が一定以下であれば、金利の安い住宅ローンを組める場合があります。
住宅ローンで購入した物件を完全に賃貸に使用するのは契約違反なのですが、一般的に1/2以下であれば、可となるケースが多いのです。
(SOHOなどの事務所使用についての考え方もだいたい同様ですね。)
こうした、半分賃貸に使用する物件を「賃貸併用住宅」と呼ばれています。
賃貸併用住宅では、一定の条件(使用面積など)を満たせば住宅ローンでの借入れが可能ですが、住宅ローンの融資額だけでは建築資金が足りない場合、アパートローンと住宅ローンを併用する場合もあります。
通常、住宅ローンのほうが、アパートローンより金利は低く、融資の審査が緩いというメリットが挙げられます(アパートローンは年収や対象物件の価値なと厳しい!)。
物件選択のポイント
ここで、物件選択のポイントですが、
家賃収入 ≧ ローンの返済月額 で考えてみてください。
最悪は自宅部分も貸し出すことで、返済が滞ることがなくなるという計算式なのですが、つまり、住宅ローンより収入が多くなる物件を選択するということです。
常に家賃収入の方が多いように賃貸経営を続けると、その差額は月々の利益として働かなくても入ってきます。このような状況を作っておくことで、最悪の事があってもローンの返済が滞ったり、自宅を競売にかけられるような事態には陥りにくいのです。
賃貸併用住宅は事実上タダで自宅が手に入るというメリットだけではなく、ローン破綻リスクを回避する観点からもオススメできます。
今後は民泊で収益化?
なお、今後は、民泊=宿泊業についても活用でき、さらなる家賃収入を期待できる可能性があります。
現在、民泊については、新法を制定し規制緩和去れるという動きがありますが、2017.3閣議決定され、国会に提出されており、早ければ来年から施行されるとも言われています。
民泊新法の動向については、こちらの過去記事をご覧ください。
民泊新法により賃貸する場合の3つの方法
❶自ら「住宅宿泊事業者=ホスト」となり直接貸し出すほうほう。
❷賃貸で貸出し、貸し出した部屋の借主が事業者となり民泊施設を運営する方法
❸業者に委託する方法
現時点では3つの運用方法が考えられます。金融機関が法制化後どのように動くかはわかりませんが、現時点では、空き部屋運用の選択肢が大幅に増えることが予想されます。
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