旅館業・民泊と消防法❸  防火管理者と消防計画(後編)

前回の続きですが、ホテル旅館等は、特定防火対象物にあたり、一定規模以上になると、防火管理者の選任が必要ということをお話いたしましたが、今回は、防火管理者の行う以下の業務について解説します。

・消防計画の策定

・消防訓練

・防火設備の点検

消防計画とは

消防計画とは、管理する建物の規模や建物の使用状況などを判断し、火災予防に関する施設使用者の取り組み、災害発生時の対処方法を計画書としてまとめたものです。防火管理者が作成し消防署長に届出を行います。

つまり防火管理者が選任された建物については、消防計画を作成する必要がでてきます。

消防計画では

・自衛消防組織の構成や人員配

・設置している消防設備の点検や整備

・消防訓練や防火教育

・災害発生時の各々の役割

などの内容をまとめ、安全かつ適切な初期消火、避難活動を行うために重要な資料となります。

消防計画書の表紙は、所轄消防のホームページなどからダウンロードできますが、収容人数や設置されている消防設備の種類、点検、避難訓練の回数と頻度、自衛消防隊の構成など、その対象となる施設の状況に応じて策定する必要があり、必ずしも雛形そのものでは施設に適合しない可能性があります。

なお、危険物・消防設備が設置されている位置を示す図面などを添付する必要があります。

消防訓練

小規模ビル、事業所の権原者・防火管理者向けの消防訓練については、管理権原者の義務として消防法第8条第1項や、防火管理者の責務(消防法施行令第3条の2)に規定があります。

防火管理者は、消防計画を作成し、定期的に訓練を実施しなければなりません。ちなみに、防火管理者であれば、消防署の立会いがなくても消防訓練は実施できます。

消防訓練については、施設の用途により、年間の回数が定められています。

特定防火対象物年2回以上の実施
非特定防火対象物年1回以上の実施

 訓練の種類

  •   消火訓練・・・対象物に設置されている消防用設備等を使用した初期消火訓練
  •   通報訓練・・・119番通報(模擬でも可)をし、的確に火災通報を行う訓練
  •   避難訓練・・・対象物を利用している者を安全、確実に屋外等へ避難誘導を行う訓練
  •   総合訓練・・・対象物の自衛消防組織をすべて動員した一連の訓練
  •   夜間想定訓練・・・社会福祉施設等における夜間時の火災想定訓練

消防訓練を行う際は「消防訓練実施計画書」を2部提出訓練後の報告も必要な場合があります。
 結果報告を提出する際は、「消防訓練実施結果報告書」を消防本部へ提出

防火設備/消防設備の点検の点検

防災設備(消防用設備等)は定期点検が義務づけられています(消防法第17条の3の3)。

防火対象物には、通常、火災から生命や財産を守るため、建物には自動火災報知設備や消火器・スプリンクラー設備など各種消防用設備が設置されています。これらの消防用設備は火災が発生した際に確実に機能を発揮するように日頃の維持管理が重要であり、その点検と結果報告が義務づけられているのです。

第17条の3の3
第17条第1項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第8条の2の2第1項の防火対象物にあつては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。

なお、一定規模を超えると、有資格者が必要となります。

消防設備

消防の用に供する設備消火設備消火器・簡易消火用具(水バケツ、水槽など)・屋内消火栓設備・スプリンクラー設備など
警報設備自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・漏電火災警報設備・非常警報設備(非常ベル、放送設備など)・非常警報器具(警鐘、携帯用拡声器など)・消防機関へ通報する火災報知設備など
避難設備すべり台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋・誘導灯・誘導標識など
消防用水防火水槽又はこれに代わる貯水池等
消火活動上必要な施設排煙設備・連結散水設備・連結送水管・非常コンセント設備など

点検義務者

所有者、管理者が点検義務者となります。もちろん防火管理者には点検義務があります。

所有者
オーナー、区分所有者
管理者
ビル管理会社・建物の管理を委託されている者、管理組合等
占有者
テナント・賃借人など※なお、管理者、占有者の義務は契約等の内容によります。

消防法第17条の3の3(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)
罰則・点検結果の報告をせず、又は虚偽の報告をした者は30万円以下の罰金又は拘留(消防法第44条第11号)その法人にたいしても罰金刑(消防法第45条第3号は両罰規定です。)

点検実施者

防火対象物の関係者の方は、消防用設備等又は特殊消防用設備等について定期的な点検と消防署長等への点検結果の報告が義務づけられています。消防設備士又は消防設備点検資格者に行わせることが推奨されます。

旅館・ホテル等で収容人数が30人以上300人未満かつ3階建て以上の場合は、 防火対象物自主点検制度の対象です。

概要

特定防火対象物
延べ面積1,000m2以上
の特定防火対象物
工場など
延べ面積1,000m2以上の
非特定防火対象物で消防長又は
消防署長が指定したもの
屋内階段(避難経路)が1つの特定防火対象物(全体の収容人員:30人から300人)

以下、

詳細な基準です。

一定条件以上の建物の消防用設備等の点検は、有資格者(消防設備士または消防設備点検資格者)による実施が消防法で義務付けられています。

[一定条件]
延べ面積1000m2以上の特定防火対象物
延べ面積1000㎡以上の非特定防火対象物で、消防長または消防署長が指定するもの

有資格者が点検を行う必要のある建物(防火対象物)は下表のとおり。〇は特定防火対象物

特定防火対象物防火対象物の種類消防設備等の点検
延べ床面積点検期間
消防長の指定防火対象物(m2以上)特定1階段等 ※1機器点検総合点検点検結果報告期間
(1)劇場、映画館、演芸場、観覧場
公会堂、集会場
(2)キャバレー、カフェー、ナイトクラブ等全て1年
遊技場、ダンスホール
性風俗関連特殊営業店舗等
カラオケボックス、漫画喫茶、ネットカフェ、個室ビデオ等1000
(3)待合、料理店等
飲食店
(4)百貨店、マーケット、物品販売店舗、展示場
(5)旅館、ホテル、宿泊所等 ※2
寄宿舎、下宿、共同住宅10003年
(6)(1)〜(4) 病院、診療所、助産所等全て1年
(1)〜(5) 避難困難要介護者・重症者が入所する社会福祉施設等
(1)〜(5) 介護を要さない方の入所する社会福祉施設等
または要介護者の通所する社会福祉施設等
1000
幼稚園、特別支援学校
(7)小学校、中学校、高等学校、大学等10003年
(8)図書館、博物館、美術館等
(9)公衆浴場のうち蒸気浴場、熱気浴場等1000全て6ヶ月1年1年
イ以外の公衆浴場
(10)車両の停車場、船舶・航空機の発着場
(11)神社、寺院、教会等
(12)工場、作業場10003年
映画スタジオ、テレビスタジオ
(13)自動車車庫、駐車場
飛行機・回転翼航空機の格納庫
(14)倉庫
(15)前各号に該当しない事業場
(16)複合用途防火対象物(特定防火対象物の用途が存在)1000全て1年
イ以外の複合防火対象物10003年
(16)の2地下街10001年
(16)の3準地下街
(17)重要文化財10003年
(18)延長50メートル以上のアーケード
  • 表内横線(-)は消防長等の指定対象外を示します。(1000㎡以上の特定防火対象物は有資格者による点検が必要です)

※1 特定1階段等防火対象物:特定部分が地階又は3階以上にあり、地上に直通する屋内階段が1以下の建物。

※2 旅館・ホテル等で収容人数が30人以上300人未満かつ3階建て以上の場合は、 防火対象物自主点検制度の対象となります。

まとめ

❶ホテル、旅館、簡易宿所などの宿泊施設は特定防火対象物

❷特定防火対象物であれば、収容人数が30人を超える、300㎡を超える場合は、防火管理者の選任が必要

❸防火管理者は、消防計画を策定し、消防訓練、設備の点検(自主点検)をする必要あり。

❹一定規模以上の特定防火対象物は、有資格者の点検が必要

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