3階建の木造住宅を旅館業に転用する場合の注意点 建築基準法改正迫る!

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3階建ての建物を旅館業に転用する場合の注意点を2019.1.31現在の法令、取り扱いをもとに解説いたします。2018年の建築基準法改正(未施行部分あり)は、今後施行されれば、旅館業(ホテル、旅館、簡易宿所)への転用が可能な木造建築物が増加すると思われますが、現在の規制と緩和の方向性を見ていきましょう。しています(2023.3加筆修正)。

3階建ての建物の建築制限  (住宅/旅館業)

3階以上のフロアを旅館等の特殊建築物にするためには(ホテルや簡易宿所などの宿泊施設は、建築基準法27条の特殊建築物となります。)が、防火地域内等では、一定の規模以上の木造特殊建築物は、建築不可となっています。

宿泊施設の種別に応じて設置基準があり、客室面積など要件があり、建物の計画の規模によって、耐火性能も変わります。

ホテル旅館などの木造宿泊施設の場合は、次のとおりとなっています(2019.1.31現在

※なお、建物の規模による内装制限や複合用途の場合の取扱い等で要件は異なりますので注意

建築(建築基準法2条 9 2

耐火建築物とは、「主要構造部」と「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分」が、一定の性能(※火災が終了するまで耐えられることが 確認されたもの)を有している建築物です。したがって、耐火建築物は、「主要構造部を耐火構造とした建築物」とは異なり、開口部について一定の性能が要求されている建築物ですので、扉を防火戸にするなど、耐火性能を満たす必要があります。

※耐火構造、耐火建築物については、こちらの国土交通省資料が詳しくまとまっています。↓

木造3階建ての戸建て住宅、共同住宅の原則(~昭和62年まで)

一般の戸建て住宅は建築基準法上の特殊建築物ではありませんので、通常は特殊建築物のような耐火性能は要求されません。しかし、都市計画法では防火・防災のために、商業地域、大きな幹線道路沿い、住宅密集地域などは、広範囲に「防火地域」が定められています。

建築基準法は、防火地域では火災が発生した場合、その延焼を最小限に食い止めるため、原則として、3階以上又は延べ床面積100平方メートル超の建物は住宅であっても(特殊建築物ではなくても)耐火建築物にすることが義務付けられています(~昭和62年まで)。

また、以前は木造の住宅は、準耐火構造は可能でも、耐火構造とすることは認められませんでしたが、国土交通大臣の認定を受けれは、木造での耐火建築物の建築が可能となり、防火地域での100㎡以上や3階建ての住宅の建築も可能となり、また現在まで、段階的に緩和されてきました。これまでの大きな法改正を見ていきます。

●昭和62年改正 「準防火地域で木造3階建て可能に」 (昭和62年~平成16年まで)

木造3階建住宅の歴史は、1987年の建築基準法一部改正により、市街地の有効利用を図るため、準防火地域において木造3階建の住宅の建設が解禁となったことがはじまりです。しかし、「防火地域」については木造の3階建て以上の建物、100㎡を超える建物は木造では建築できないため、RC造か、もしくは耐火被覆の鉄骨造などの工法などが主流でした。

●平成16年改正で「木造耐火構造」 (平成16年~令和元年まで)

しかし、平成16年(2004年)に2×4(ツーバイフォー)工法、2006年には木造軸組み工法で、木部を一定の被覆をした構造が国土交通大臣の認定を取得し建築可能になりました。これが、木造耐火建築物というもので、これ以降、木造で3階建ての住宅、アパート、規模の大きい商業施設やなどの大規模な建築が可能になりました。

上記の理由で、古い3階建ての建築物は、少なくとも、住宅としての一定の耐火性能を有していることが分かりますが、注意点は、住宅は特殊建築物でないため、多くの免除・緩和規定があります。

また、令和元年6月以前の建築基準法では、準耐火以下の防火性能の住宅の3階部分以上に特殊建築物である旅館業を設けることはできませんでした。

●3階建て住宅の竪穴区画の緩和 〇竪穴(たてあな)区画とは何か?

小規模な住宅は、竪穴区画を免除する規定が存在しますが、

竪穴とは、階段や吹き抜けなどの部分(例:下図の階段部分)等のことで、竪穴区画とは竪穴とそれ以外の部分を区画することで、火事の際、炎や煙が別の階などに延焼することを防ぐ目的があります。

※参考:建築基準法施行令112条9条但し書き

一般の戸建て住戸における竪穴区画の免除については、建築基準法施行令112条9条但し書きに規定されています。要約すると、階数が3階以下で床面積が200㎡以内の住宅については、その内部の竪穴区画が免除される。

建築基準法施行令112条第9項(抜粋)

主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地階又は3階以上の階に居室を有する建築物の住戸の部分(住戸の階数が2以上であるものに限る。)、吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる公衆便所、公衆電話所その他これに類するものを含む。)については、当該部分(当該部分が第1項ただし書に規定する用途に供する建築物の部分でその壁床面からの高さが1.2m以下の部分を除く。及び天井の室内に面する部分回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。以下この項において同じ。の仕上げを準不燃材料でし、かつ、その下地を準不燃材料で造つたものであつてその用途上区画することができない場合にあつては、当該建築物の部分)とその他の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とを準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分については、この限りでない

 避難階からそ直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなつている部分、階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つたもの

 階数が3以下で延べ面積が200m2以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200m2以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分

しかし、旅館やホテルの用途は、建築基準法の用途の取り扱いが異なり、ホテル旅館、簡易宿所などの用途に利用する場合、上記の緩和規定は適用されなくなります。これは耐火建築物でも同様です。

●建築基準法さらに緩和で3階建て戸建てで旅館協可能に (令和元年6月~)

令和元年6月築基準法改正により,3階建で延べ面積 200m²未満について、竪穴区画+自火報の設置により、耐火建築物としなくても,3階部分を旅館等の用途で使用できることとなりました。

これに先立ち、平成30年(2018年)6月に建築基準法改正に先立ち、用途変更(住宅→旅館業)の確認申請が100㎡→200㎡に緩和されています。

竪穴区画は必須であり、住宅➾ホテル(特殊建築物)に変更する場合、主要構造部(耐火or準耐火)だけではなく、こうした緩和規定も考慮する必要があります。具体的には、竪穴区画のない3階建ての準耐火の木造建築物を転用する場合は、耐火や準耐火の建物の場合、竪穴区画は以下の平面図のように壁・防火扉で区画し、壁は小屋裏まで区画することが必要です(詳しくは建築士などの専門家に確認ください。)

※参考:建築基準法施行令112条9条但し書き

一般の戸建て住戸における竪穴区画の免除については、建築基準法施行令112条9条但し書きに規定されています。要約すると、階数が3階以下床面積が200㎡以内の住宅については、その内部の竪穴区画が免除される。

建築基準法施行令112条第9項(抜粋)

主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地階又は3階以上の階に居室を有する建築物の住戸の部分(住戸の階数が2以上であるものに限る。)、吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる公衆便所、公衆電話所その他これに類するものを含む。)については、当該部分(当該部分が第1項ただし書に規定する用途に供する建築物の部分でその壁床面からの高さが1.2m以下の部分を除く。及び天井の室内に面する部分回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。以下この項において同じ。の仕上げを準不燃材料でし、かつ、その下地を準不燃材料で造つたものであつてその用途上区画することができない場合にあつては、当該建築物の部分)とその他の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とを準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし次の各号のいずれかに該当する建築物の部分については、この限りでない

 避難階からそ直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなつている部分、階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つたもの

 階数が3以下で延べ面積が200m2以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200m2以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分

しかし、旅館やホテルの用途は、建築基準法の用途の取り扱いが異なり、ホテル・旅館、簡易宿所などの用途に利用する場合、上記の緩和規定は適用されません。

したがって、一般の住宅を旅館業に転用する場合は、用途変更の建築確認申請の有無にかかわらず、上図のような竪穴区画の設置(改築)工事が必要となります。

※当事務所の過去の実績から、

準耐火や耐火建築物に竪穴区画を設置する場合は、準耐火以上の壁、防火扉など、建物の耐火性能に合わせた建具が必要となります。

まとめ

住宅宿泊事業における注意点

3階建戸建て住宅の制限については「民泊の安全措置の手引き~住宅宿泊事業法における民泊の適正な事業実施のために~」の中で9ページに記載があります。

(3)届出住宅の規模に関する措置について(告示第二第二号イ~ホ)

宿泊者使用部分を3階以上の階に設けないこと“との記載があり、例外的に”届出住宅が耐火建築物である場合”とされています。

こちらは、住宅宿泊事業法の安全措置に関するチェックリストの中にも項目として出ています。

したがって、木造3階建てでも住宅宿泊事業はできないことはないのですが、この点ご注意ください。大田区の特区民泊においても、ほぼ同様で、3階を使用しないことが要件となっています。

まとめ

3階建て以上の住宅で、防火区画(竪穴区画)がない場合でも、民泊(住宅宿泊事業の届出)は可能。その場合、

・3階以上を使用しない

・竪穴区画の設置

・建物が耐火構造

のいずれかが条件となります。

その他の規制緩和(参考)2018.6建築基準法の改正の要旨

ここまで、木造3階建ての規制を長々とご紹介しましたが、2018年6月の法改正により緩和が決定しています(2019.1.31現在未施行)。

改正のポイントは、宿泊施設に関しては大きく2つで、

●用途変更の申請が必要な面積の緩和 100㎡超→200㎡超

●3階建の特殊建築物の耐火建築物とする要件の緩和(準耐火で可)

以下、国土交通省の法改正の要旨ですが、原則として、耐火建築物でなくとも3階建ての特殊建築物が可能になるように見えます。

改正とともに、竪穴区画などの基準も緩和されれば、完全に木造3階住宅が旅館儀用に転用可能になるわけですが、以下のような既定のパブリックコントが募集されています。

※3ページの部分に重要な記載がありますが、以下のとおりです。

(4) 小規模な特定特殊建築物の特例に関する技術的基準

③ 階段の安全措置に関する技術的基準(令第112 条第9 項・令第121 条関係)
階数が3で延べ面積が200 ㎡未満の建築物であって法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途に供するもの(以下「小規模( 二)項建築物」という。)のうち、主要構造部が準耐火構造でないものについては、次に掲げる用途に応じて、竪穴部分とそれ以外の部分をそれぞれ次に掲げる防火設備等で区画することとする。
・ ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎及び児童福祉施設等(通所利用するもの)の場合は、間仕切壁又は戸

・ 病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)及び児童福祉施設等(就寝利用するもの)の場合は、間仕切壁又は防火設備(20 分間の遮炎性能を有するもの。ただし、竪穴部分以外の部分にスプリンクラー設備を設置した場合にあっては10 分間の遮炎性能を有するもの。)また、小規模( 二)項建築物のうち、病院、診療所及び児童福祉施設等であって、上記の防火設備等により区画されている場合に限り、2以上の直通階段の設置を要しないものとする。

これを見る限り、竪穴区画部分については、防火性能はともかくとして、戸や壁で覆うことが必要なのであろうことが伺えます。また、主要構造部が耐火構造でない小規模特殊建築物の階段のことを言っているため、耐火3階建ての場合は、メゾネット構造でも可となるのかもしれません(階段周りを区画することで対応(竪穴区画の設置)2022.10現在)。※実際に管轄の各自治体(特定行政庁)がどのような運用を行うのか、又は条例規則等で独自に規制をする可能性もありますが、書きぶりとしては緩和すると言っています。→2023.3現在加筆 緩和されていると解されますが、竪穴区画が必要です(戸や壁の仕様は疑義がある点ですが、当事務所で取り扱った案件はすべて防火戸を設置しています(2023.3現在)。防火戸にまでは不要とする解説もありますが、各自治体において、必ずしも統一的ではないと解されます。具体的な施工は権限のある官公署(管轄自治体の建築主事)や一級建築士等に相談が必要です。

(10) 防火地域又は準防火地域内の建築物に関する技術的基準
壁、柱、床その他の建築物の部分及び防火設備の技術的基準(法第61 条関係)
(イ) 以下に掲げる建築物について、「耐火建築物」又は「耐火建築物と同等以上に延焼防止性能が確保された建築物」とすることを求めるものとする。
イ 防火地域内にある建築物で、階数が3 以上又は延べ面積が100 ㎡を超えるもの
ロ 準防火地域内にある建築物で、地階を除く階数が4 以上又は延べ面積が1,500 ㎡を超えるもの
(ロ) 以下に掲げる建築物について、「準耐火建築物」又は「準耐火建築物と同等以上に延焼防止性能が確保された建築物(下記ハの建築物の場合、現行の令第136 条の2に掲げる基準に適合するものを含む。)」とすることを求めるものとする。
防火地域内にある建築物で、階数が2以下かつ延べ面積が100 ㎡以下のもの
ロ 準防火地域内にある建築物で、地階を除く階数が2以下かつ延べ面積が500 ㎡を超え1,500㎡以下のもの
ハ 準防火地域内にある建築物で、地階を除く階数が3かつ延べ面積が1,500 ㎡以下のもの
(ハ) 準防火地域内にある建築物で、地階を除く階数が2以下かつ延べ面積が500 ㎡以下のもの(木造建築物等に限る。)について、「外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分を防火構造とし、かつ、外壁開口部で延焼のおそれのある部分に、建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、20 分間屋内側の面に火炎を出さない防火設備を設けた建築物」又は「当該建築物と同等以上に延焼防止性能が確保された建築物」とすることを求めるものとする。
(ニ) 準防火地域内にある建築物で、地階を除く階数が2以下かつ延べ面積が500 ㎡以下のもの(木造建築物等を除く。)について、「外壁開口部で延焼のおそれのある部分に、建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、20 分間屋内側の面に火炎を出さない防火設備を設けた建築物」又は「当該建築物と同等以上に延焼防止性能が確保された建築物」とすることを求めるものとする。
(ホ) 現行規定において基準の適用が除外されている以下の建築物については、従来と同様の取扱いとする。
イ 延べ面積が50 ㎡以内の平家建ての附属建築物で、外壁及び軒裏が防火構造のもの(防火地域に限る。)
ロ 卸売市場の上家又は機械製作工場で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これらに類する構造でこれらと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供するもの

いずれにしても、現段階では、緩和の程度は不明確ですが、旅館業への転用が緩和される方向であることは明らかです。今後の動向に注視する必要があります。

あわせて動画もご覧ください。

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    ※この記事は2019.1.31時点の法令をもとに書いておりますので、法改正等にご注意いただき、最新の法令、取扱等ご確認ください。

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