種苗法改正案|原則自家採取・自家増殖禁止!!許諾性へ 罰金3億円!!

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2020.2.18苗法改正案を自民党農林合同会議了承➡国会へ (※追記3/3閣議決定)

種苗法の改正案案が国会に上程されています。種苗法は、新品種の開発者などの権利者について、公に権利を認め「育成者権」を保護する目的の法律です。

育成車検の保護制度として「種苗登録制度」があり、登録を受けた品種については、一定期間(通常の植物は25年、樹木30年)保護されます。

今回は改正案のポイントを解説しますが、表向きは改正ですが、近年の農業関係法令改正と併せて総合的に考えると、農業者にとっては致命的改悪とも取れる内容となっています。

詳細はこちらの記事を参照

動画解説です。こちらも併せてご覧ください。

自家増殖禁止

種苗法改定によって登録品種は自家増殖(採種)は一律禁止になり、育成者、つまり開発した者の許諾性となります。

登録品種から種を取ったり、切り花で増やしたりできなくなったというわけです

※登録品種ではない一般品種(在来種)については、規制の対象外ですが、制度の施行により登録品種が増えていくことが想定され、相対的に一般品種の流通量が少なくなると、今後、必然的に選択できる品種は限られてくる(一般品種が入手できなる)ことが想定されます。

罰則強化

種苗法改定によって登録品種は自家増殖(採種)は一律禁止になり、育成者、つまり開発した者の許諾性となります。

自家採取の禁止に違反すると「10年以下の懲役、1000万以下の罰金(法人で3億円)」そして「共謀罪の対象」という厳罰が課されます。

改正案では、品種登録の出願時、輸出していい国や、国内で栽培を認める地域を指定できるようにする。

条件違反は育成者権の侵害となり、差し止めや損害賠償を請求できるようになります。

※コメント:不可抗力での流出➡花粉や虫で隣地に交配種ができてしまった場合などの責任は現段階では不明です。

品種登録の許諾性

登録品種以外の一般品種、つまり、在来種や品種登録されたことがない品種、品種登録期限切れ品種は、従前どおり制限しない。

※農林水産省は、一般品種の割合は、 米(こめ)では全体の84%、ミカンでは98%と言っていますが、今後以下のような理由で、一般品種の供給が減少することも懸念されます。

  • 種の供給の国際化(グローバル化)による外資(多国籍企業)の参入、
  • 国際的な種苗登録の増加
  • 種の時価採取可能な一般品種よりも、利用が制限された登録品種の方が種苗業者にとって利益率が高い

すべての農作物のデータを把握していないのではないか?偽装登録を阻止できないのではないか?

以下、山田正彦氏(元農林水産大臣)が農林水産省に質問していた内容の要旨(2018.4)を踏まえたものですが、

偽装登録の危険性

❶登録に値する新品種かどうかの見極めが極めて難しい。

➡つまり、登録しようとする品種が在来種、固定種であるのか、完全には登録を受け付ける農林水産省が把握できてはいないのではないかという問題があります。

したがって、例えば大企業が、資料を持ち込み、外観上新品種のように見えてしまえば、それが固定種であったとしても品種登録できてしまうのではないかという懸念があります。

山田氏の質問に対し、農林水産省は、不服申し立て、訴訟を提起すればいいという見解を述べていましたが、これは、いかにも非現実的な回答で、山田氏も指摘していましたが、農家訴訟を提起する資金的な余力も余裕もないと考えるべきでしょう。

一度登録されてしまった品種に反証を唱えるのが難しい

また、仮に、間違って登録された品種で在来種であったとした場合、そもそも、誰に訴訟追行権(当事者となる権利)があるのかが分からず、訴訟そのものが成立しないケースも想定され、栽培している農家は泣き寝入りということも十分考えられます。

一般論としては、品種登録されていない品種の利用は自由だと言っても、実際は、山田氏ら識者が唱える懸念が現実化する可能性は十分あります。

種子法廃止との関係|一般品種の供給が困難に!

種子法が廃止され、もはや、種を管理する主体であった都道府県や農研機構の立ち位置が極めて不安定です。

種子法廃止は種苗の生産を民間開放しましたが、現実的には都道府県が有していた種苗の知見を民間に無償で流出させるかのような内容となっていて、民間とは外資系種苗メーカーも当然に含まれます。

言い過ぎかもしれませんが、客観的に見て、

種苗法廃止の効果は、日本固有の種苗技術を民間、そして海外に流出させ、

都道府県による種苗の供給能力を失わせ、

結果的に、大規模種苗メーカーが販売する種苗の独占的な地位を不動のものにすることを容認するものです。

これは、農家が利用できる種が極端に少なくなるという「種苗の選択制の喪失」が現実味を帯びています。また、遺伝子組み換え、ゲノム編集や残留農薬の問題(ex. グリホサートイソプロピルアミン塩 の基準緩和(旧基準の400倍))も今以上に顕在化するでしょう。

種苗法廃止、種子法廃止の対策はあるのか?

○国としての対策

野党が提出している種苗法の復活案ですが、現在の国会の勢力を勘案すると、厳しいと言わざるを得ないでしょう。

○都道府県での対策

種子条例の制定

地方独自の条例制定により、旧種子法同様の法的効果を実現する方法があります。現在10以上の件で制定されていますが、これを全国に広げることが重要です。

年度
平成30年度施行 埼玉、新潟、兵庫、山形、富山
平成31年度施行 富山、北海道、岐阜、福井、宮崎
令和2年度施行 長野、宮城、栃木

10県が条例施行、3県が施行予定。

地域で品種登録できる場合は、自治体や農協などが積極的に登録を推進すること。

○地域、個人での対策

※新品種であればは必ず種苗登録する(個人、地域)。

地域一体となり、地域の固有種を守る➡種子条例の制定を促す。なるべく地域の品種を種苗として使用する。

そして、「種苗メーカーのF1作物の種苗を購入する場合」は、契約条件(農薬の使用、自家増殖した場合の賠償、販売条件、解約条件)などをよく検討し、わからない場合は専門家にリーガルチェックを受ける。

などです。種子法廃止、そして今回の種苗法の改正、そして近年の農業関連法の改正は、TPP批准に起因しています。これらを丸のみすれば、日本の農家は、種苗メーカーのサラリーマン化、フランチャイズのコンビニ並みに選択肢がなくなります。

「種苗法の改正は育成者権が強化される」、「一般品種(固有種、在来種)は対象外なので関係ない」などと狭い視野で考えず、

日本の食糧安全保障を脅かすような壮大な計画だということを認識したうえで、個々の農家、自治体、農協は対策を講じてほしいものです!!

種子法はいし、種苗法改正、TPPについては、元農水大臣の山田正彦氏(農家の個別所得補償制度を実現した民主党政権時の農水大臣。)が日本有数の知見を有していますので、こちらを参考にしていただけれはと思います。

コメント

  1. […] 種苗法改正案|原則自家採取・自家増殖禁止!!許諾性へ 罰金3億円!! 2020.2.18苗法改正案を自民党農林合同会議了承➡国会へ 種苗法の改正案案が国会に上程されています。種苗法は、新 […]