農薬グリホサートの危険性|残留農薬検査でグリホサート(枯葉剤ラウンドアップの成分)がなぜ検出されるのか?

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残留農薬検査で、グリホサートが相次いで検出されています。そして、製品として販売されている小麦粉や市販の食パンなどからです。

グリホサートと言えば、開発したのは、世界の農業メジャーであるモンサント社でもすでに特許の期限切れの農薬成分(枯葉剤)なのですが、なぜ今頃、日本の残留農薬検査で高い値が検出されているのか、今回はその謎に迫ります。

動画解説はこちら。併せてご覧ください

パンから除草剤が検出される理由。

パン、小麦粉から農薬成分のグリホサートが検出される理由は、次のとおりです。

  1. パンに使用される小麦粉が輸入モノである
  2. 国産小麦よりも米国産などの小麦が好まれる(輸入はアメリカ、カナダが多い)
  3. 日本の残留農薬基準が甘くなった(世界の基準は厳しくなっている)
  4. プレハーベスト農法による収穫前散布

以下、順次、解説していきます。

令和元年の輸入小麦粉の残留農薬検査結果

これは、政府が輸入している小麦の残留農薬検査の結果で、農林水産省が公表しているデータです。

輸入米麦のかび毒、重金属及び残留農薬等の分析結果(令和元年年度 農林水産省検査結果  農林水産省HPより)

下の表は、同様の残留農薬検査の平成25年度のものですが、基準値が5.0mgであることが分かりますが、上の表(令和元年)は基準値が30mgとなっています。

つまり基準値を6倍に上げていることが分かります。その他の農薬の基準も軒並み、2倍~10倍に上がっています。

輸入米麦のかび毒、重金属及び残留農薬等の分析結果(平成25年度 農林水産省検査結果  農林水産省HPより)

なぜこのように基準が緩和されたのか?

世界の長量は、残留農薬、特にグリホサートは規制される成功にあり、欧州では禁止となったり、様々な訴訟(健康被害)が提起されていたりしますが、世界中でグリホサートが残留した農作物、特に小麦の行き場所(売り先)がなくなっていますが、

なぜか、日本は規制値が緩和されたので、こうした、売り先のなくなった小麦の仕向け先は日本に集中しています。

ちなみに現行法上、基準内であれば、法律違反ということにはなりませんが、改定前の基準と比較すると、ほとんどの場合が違反となる数値です。

お茶の場合の国際比較|日本の基準で使用すると輸出できない!!

※因みに、以下は、お茶の残留農薬基準の世界比較した表ですが(農水省データによるhttps://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/zannou_kisei.html)、

Pesticides name農薬名日本の基準値(mg/kg)CODEXの基準値(mg/kg)香港の基準値(mg/kg)台湾の基準値(mg/kg)韓国の基準値(mg/kg)中国の基準値(mg/kg)シンガポールの基準値(mg/kg)マレーシアの基準値(mg/kg)インドネシアの基準値(mg/kg)タイの基準値(mg/kg)ベトナムの基準値(mg/kg)米国の基準値(mg/kg)カナダの基準値(mg/kg)オーストラリアの基準値(mg/kg)ニュージーランドの基準値(mg/kg)EUの基準値(mg/kg)ロシアの基準値(mg/kg)UAEの基準値(mg/kg)
GLYPHOSATEグリホサート110.10.011不検出0.2基準値なし0.01輸入を認めない1.00.120.12基準値なし2

日本の基準で農薬散布し輸出し、農薬が残留していた場合は、日本の基準値内であっても、少なくとも、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ、ニューランドで検査を受けた場合、基準値オーバーで輸入できないということになり、事実、野菜や果物は、海外で残留農薬検査に引っかかっているケースもあります。

※各国の基準はこちら(農林水産省)

諸外国における残留農薬基準値に関する情報:農林水産省

※国内の基準はこちら(農林水産省)

残留農薬基準値検索システム

さて、そもそも、グリホサート(農薬名ラウンドアップ)の販売元のモンサントとは、どういう企業なのでしょうか?

世界の種子企業

モンサントは世界的な農業の総合企業、農業メージャー(穀物メジャー)です。

日本には、住友化学、三井化学などの農薬メーカーそして、タキイやサカタなどの種苗メーカーも数社ありますが、モンサントは、この両方の機能を兼ね備えた、総合的な農業企業で、世界でトップの農業関連の企業グループ(バイエル)の中核企業です。

世界の種苗会社、農薬会社(農業メジャー)

出展 : http://www.hinshu2.maff.go.jp/pvr/jyousei/jyousei202104.pdf  農林水産省 種苗をめぐる情勢
農林水産省食料産業局知的財産課 令和3年4月

さて、農業メジャー世界一の旧モンサントは、枯葉剤の開発メーカーとして有名です。グリホサートは強力な農薬で、グリホサートを使用した農薬ラウンドアップは、100均一やホームセンターでも販売されています。

ところで、モンサントに代表される農業メジャーの種苗販売は、通常、種と農薬の販売がセットです。

つまり、農薬耐性を付けた、遺伝子組み換え又は、ゲノム編集された種子を販売していていますが、例えば、モンサントの場合は、グリホサート耐性(農薬耐性)を付けた農作物を農薬とともに販売します。

遺伝子組み換え作物は、農薬をいくら使用しても枯れることはないため、農薬の使い過ぎが問題視され、事実、グリホサートの残留農薬濃度は飛躍的に増していて、農薬の使用と関係のない人の毛髪からも検出されるほどです。これは、家畜が飼料として食べても残留することを意味しています。

※参考:以下の動画は、元農林水産大臣がグリホサート(ラウンドアップ)の危険性を解説しています。

なお、アメリカで生産される大豆やトウモロコシは、約90%以上が遺伝子組み換えであるといわれています。

グリホサートの危険性

グリホサートは枯葉剤であり、 有効成分名はグリホサートイソプロピルアミン塩。グリシンの窒素原子上にホスホノメチル基が置換した構造を持つ、つまりグリシン(アミノ酸)と、リン酸の誘導体です。

グリホサートの作用

その作用としては、シキミ酸経路という、たんぱく質合成機能を停止させる作用、ミネラルとグリホサートが結合する作用を持ち、これにより、植物の生長、生命維持をできなくして、

やがて、細菌などに負けて衰弱死、つまり枯れてしまいます。

なお、近年話題になっている遺伝子組み換え作物ですが、簡単に言うと、遺伝子組み換えにより大豆や小麦、トウモロコシに、グリホサート耐性を付け、グリホサートを散布しても雑草は枯れるけれども、農作物には影響がないようになっています。つまり、いくら農薬を散布しても枯れないため、必然的に残留農薬の濃度がたかくなるのです。

遺伝と組み換えの問題点は、一般的には、食べた場合の植物の遺伝子そのものが、人体や環境に影響を与えるのではないかという懸念ですが、

本質的な問題は、むしろ残留農薬にあるといえるのではないでしょうか。

発ガン性について

また、発ガン性についてですが、様々な意見はありますが、 2015年以降はIARC(国際がん研究機関)がグリホサートを「おそらく発がん性がある」とされるの2Aのグループに分類しました。これにより、例えば、米カリフォルニア州では訴訟がいくつも提起され、オーストラリア、EUで規制が強化、または強化の動きがあります。

グループ1
(120種類)※
ヒトに対する発がん性がある。
(Carcinogenic to humans)
例)アルコール飲料、ベンゾ[a]ピレン、ベンゼン、アフラトキシン等
 ・ヒトへの発がん性について十分な証拠がある場合
グループ2A
(81種類)※
ヒトに対しておそらく発がん性がある。
(Probably carcinogenic to humans)
例)アクリルアミド、亜硝酸塩、グリホサート
 ・ヒトへの発がん性については限られた証拠しかないが、実験動物の発がんについては十分な証拠がある場合
グループ2B
(299種類)※
ヒトに対して発がん性がある可能性がある。
(Possibly carcinogenic to humans)
例)わらび、漬けもの、鉛等
 ・ヒトへの発がん性については限られた証拠があるが実験動物では十分な証拠のない場合
 ・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかないあるいは証拠はないが、実験動物は十分な発がん性の証拠がある場合
グループ3
(502種類)※
ヒトに対する発がん性について分類できない。
(Not classifiable as to its carcinogenicity to humans)
 ・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかなく、実験動物についても不十分又は限られた証拠しかない場合
 ・他のグループに分類できない場合
グループ4
(1種類)※
ヒトに対する発がん性がない。
(Probably not carcinogenic to humans)
 ・ヒトへの発がん性はないことを示す証拠があり、かつ実験動物についても同様な証拠がある場合

上記は、農水省の公表を基に作成した,のです。

国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について:農林水産省

このように、グリホサートには、その物質自体の毒性等の問題はあり、また遺伝子組み換え植物の問題も重要ですが、そもそもそ、根本的に小麦に対する収穫直前の散布方法に大いに問題があります。

使用方法に問題|プレハーベスト農法

グリホサートはアミノ酸である「グリシン」と「リン酸」の誘導体なので、普通に考えれば、ある程度の量であれば生分解されるはずですが、問題はむしろその使用方法です。

アメリカなどの農業地帯の場合、小麦(この場合はグリホサート耐性のない小麦)に対して農薬を散布する場合、生育中はもちろんのこと、 収穫作業の効率化のために、収穫直前に散布するプレハーベスト処理(プレハーベスト農法)が行われていています。

その理由は、グリホサートに耐性のない小麦(や大麦)を枯らすことで、機械での刈り取りがスムーズにできるためです。

つまり、作業効率を上げるために、小麦を乾燥させることが目的なのです。

近年の日本における輸入小麦からの高いグリホサートの残留農薬の検出率は、このプレハーベスト処理によるのは明らかですが、特に小麦粉は、刈り取りから口に入るまで、水で洗うことがないため、残留が多く、特に全粒粉の小麦粉は危険です!!

グリホサートの危険性は、賛否両論で、正直なところ、国の示す残留農薬基準(閾値)が妥当なものなのかは不明です。また基準変更(緩和)時には500件のパブリックコメントが寄せられ、ほとんどが基準緩和に否定的であったものの、予定通り、改定されました。

基準の根拠は、国際基準(CODEXなど)と説明されていますが、食品ごとにばらつきがあり、大きな疑問が付きまといます。

※参考:当時のパブコメ

https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000167925

なお、現在のところ、輸入小麦を食べる場合、グリホサートが混入している可能性は、以前に増して高くなっていて、アメリカ、カナダ産のものは、ある程度残留していると思った方がよいでしょう。

対策としては、食べないことですが、どうしてもという場合、対策は、国産小麦を食べるという以外にないでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、消費者がほとんど知らない間にグリホサートを含む残留農薬基準が緩和されたというお話でしたが、国産も安心してはいられません。 現在、日本の農業は転換期に差し掛かっていいて、世代交代が現実のものとなり、また、伝統的な種子の流通、農協の力が衰退し、まさに、外資や大資本の波が押し寄せています。これは、個々の農業者、消費者に大いに考えていただきたい問題です。

まとめ

  1. グリホサートの残留農薬基準は近年大幅に緩和(甘くなった)➡製品のパンなどを検査すると残留しているケースが多い
  2. グリホサートが検出されるのは、刈り取り前に、乾燥目的で散布されるから
  3. 人や家畜にも残留する。発ガン性の疑い
  4. 残留がないものを選ぶのであれば国産、または米を代替として輸入小麦は食べない又は控える

など、何らかの自己防衛が必要でしょう。

本記事の参考文献

農業関連の手続きや申請代行は当事務所まで。 こちらのページをご覧ください

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