木造3階建ての建物を民泊(旅館業や住宅宿泊事業)にする場合のポイント

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木造3階建てで旅館業を行う場合、旅館業法や住宅宿泊事業法上は必要な衛生設備などの設置が必要ですが、一方で建築基準法や消防法では一般住宅に比べて厳しい制限や基準が課されます。特に防火地域おや準防火地域においては、防火性能が重視されるため、構造や設備、耐火性能などに関する特別な注意が必要です。

以下、防火地域と準防火地域それぞれの観点から、特に建築基準法上の注意点を解説いたします。


防火地域における注意点

防火地域は、市街地の中心部などで火災拡大を防ぐために都市計画法にも続き管轄自治体が指定しま。この地域では、木造建築物に対して非常に厳しい制限があります。
※そもそも2000年までは、木造3階建ては不可でした。

① 構造制限(建築基準法 旧第61条)

この規定は、2000年の改正によるものですが、それまで、放火地域内では木造3階建ては建設できませんでしたが、一部緩和され、基準を満たせば、木造でも3階建てが可能となりました。

  • 木造で3階建て以上、または、延べ面積100㎡を超える建築物は、耐火建築物でなければなりません。※耐火建築物とは、主要構造部が耐火構造の建物をいいます。
  • 旅館業は「特殊建築物(用途上、一定の人の出入りがある)」に該当し、延べ面積や階数が小さくても耐火建築物とする必要があるケースが多いです。

⇒ 木造では原則的に不可。ただし、最新の技術(CLTや木造耐火構造など)を用いた場合は、耐火性能が認定された木造耐火建築物として建築可能です。

② 防火設備の設置義務

  • 開口部(窓や出入口)には防火扉や防火シャッターが必要。※旅館業の場合は、※竪穴区画などの防火区画部分(後述)にも当然防火扉が必要です。
  • 外壁および軒裏にも防火被覆が必要です。

※防火戸は、古い建物でも鉄扉が設置されていると思いますが、通常認定を表すシールなどが添付されています。
古いものだと、建設省認定 甲種(乙種)とか書いてあります。


準防火地域における注意点

準防火地域は、防火地域に比べてやや制限が緩やかですが、延焼の恐れがある地域に指定されるため、一定の防火措置が求められます。

① 構造制限(建築基準法 旧第62条)

  • 木造3階建てで延べ面積が500㎡を超える場合は耐火建築物または準耐火建築物としなければなりません。
  • 延べ面積が500㎡以下の場合でも、「特殊建築物」(旅館業は建築基準法上の特殊建築物です。)の場合は、準耐火建築物とする必要があります。3階建ての場合は、従来は旅館業は不可でしたが、後述の竪穴区画を設置することにより可能とする緩和がなされました。

② 防火構造の採用

  • 外壁、軒裏などに防火構造の材料を使用する必要があります。
  • 隣地境界線や道路境界線から3m以内の部分の開口部には、*防火設備(防火扉など)の設置が必要。

③ 主要構造部の耐火性能

  • 柱、梁、床、屋根などの主要構造部には、準耐火構造または一定の耐火性能が必要です。

【3】共通の注意点(用途・旅館業として)

① 用途変更・用途制限

  • 旅館業は「特殊建築物」に該当し、延べ床面積が200㎡を超える場合は、用途変更の場合は確認申請が必要です。

② 避難経路・非常用照明・防火区画

  • 多数の宿泊者が想定されるため、避難経路の確保誘導灯や非常用照明設備の設置が必要となる場合がほとんど。
  • 各階や用途ごとに防火区画を設ける必要があり(防火シャッターや防火扉)、旅館業の場合、3階以上に宿泊スペースを設ける場合、竪穴区画という放火区画が必要となります。

※竪穴区画とは?:階段や吹き抜けなど、縦方向に連続する空間(竪穴といいます)を防火区画(一定の性能の壁や防火戸などの防火設備)で仕切ることで、火災時にの延焼を防ぎ、避難路などの安全性を確保するためのものです。

③ 消防法との関連

  • 建築基準法とは別に、消防法に基づく設備設置(自動火災報知設備・誘導灯、消火器・木部によってはスプリンクラー等)も必要です。

放火地域と準防火地域での木造3階建てでの宿泊施設【まとめ】

地域木造3階建て旅館の建築可否構造要件(旅館業の場合)特記事項
防火地域原則不可だが、耐火構造なら可
※旅館業の場合竪穴区画必須
耐火建築物木造で建てるには耐火構造の認定が必要
準防火地域規模により可能
※旅館業の場合竪穴区画必須(住宅宿泊事業も原則同様)
準耐火建築物 or 防火構造延べ500㎡以上や用途によって構造制限がかかる

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