1.旗竿地とは?
旗竿地(はたざおち)とは、道路から奥まったところに家があり、出入り口が狭い土地で、つまり※旗のよう形の土地(2の図を参照)です。不動産業界では「敷地延長」略して敷延(しきえん)と呼ばれることもありますが、正式には「路地状敷地」といいます。
さて、この旗竿地ですが、間口が狭く、奥まっているため、不動産の流通価格は低めです。法令上様々な規制を受けるため、大きな建物や営業許可の必要な建物の建設は困難です。不動産業者には、通常の整形地に比べると敬遠されがちですが、敷地が奥まっているため、前面道路の喧騒・騒音が距離的な関係で緩和される場合もあり、住宅には案外適しています。
以下、旗竿他のメリツト・デメリツト法的な要件、それと、民泊などの営業許可について解説していきます。
旗竿地のメリット
- 価格が安い・・・同じ分譲区画でも安くなる傾向
- 道路から離れているため静か
- 路地状敷地部分が駐車場になる
旗竿地のデメリット
- 日あたりが悪い、日照制限など希望条件で建築することができない場合あり。
- 車を駐車しにくい。車は縦にしか駐車できない、車のドアを開けることができない(特に幅2m位だと厳しい)
- 車両や重機が入れず、建築工事費用が高くなる。
- 売れない(売りにくい)→つまり地価が安くなるので高めの金額で買うと資産価値が低い
- 隣に対者があると圧迫感
2.建築基準法上の旗竿地(路地状敷地)の制限
1.建築基準法→(前面道路4m以上)に2メートル以上接道する必要があります。
2.ただし、住宅密集地では、条例(都の場合は「※東京都建築安全条例」)によりさらに規制され、間口が4m必要な場合がほとんどです。特に、消防上厳格な営業許可が必要な「特殊建築物」に該当するような建物は、建築基準法上の要件を満たしても、許可が下りないことが一般的ですから、ご注意ください。
※東京都建築安全条例上の制限(東京の場合はご注意ください!)
※参考条文 東京都建築安全条例10条の3(抜粋)※2019.2.5現在
(道路に接する部分の長さ)第十条の三 特殊建築物の敷地は、その用途に供する部分の床面積の合計に応じて、次の表に掲げる長さ以上道路(前条の規定の適用を受ける特殊建築物の敷地にあつては、同条の規定により接しなければならない道路)に接しなければならない。
特殊建築物の用途に供する部分の床面積の合計 長さ 五百平方メートル以下のもの 四メートル 五百平方メートルを超え、千平方メートル以下のもの 六メートル 千平方メートルを超え、二千平方メートル以下のもの 八メートル 二千平方メートルを超えるもの 十メートル2 前項の規定は、次に掲げる建築物については、適用しないことができる。一 第十条第二号に規定する共同住宅二 前号に掲げるもののほか、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める建築物(昭四七条例六一・全改、平五条例八・平一一条例四一・平二七条例三九・一部改正)
この場合は、どうでしょうか?A、B、Cは可、Dはよさそうに見えますが、東京都の場合は建築安全条例により、やはり不可です(建築安全条例10条参照 ※例外規定あり。)。➡東京都では※路地定敷地(旗竿地)の規制があります。
旅館やホテル、簡易宿所は特殊建築物です。つまり、例えば旅館業の申請をする場合に、同時に自動火災報知設備などの設置を消防署に対して行いますが、ここで接道部分が建築基準法・安全条例に適合しない物件については、結果的に許可が下りないことが想定されますのでご注意ください。
東京都建築安全条例による制限(参考条文)
参考:路地定式地の規制とは?
(その敷地が四メートル未満の道路にのみ接する建築物に対する制限の付加)
建築基準法第四十三条の二 地方公共団体は、交通上、安全上、防火上又は衛生上必要があると認めるときは、その敷地が第四十二条第三項の規定により水平距離が指定された道路にのみ二メートル(前条第三項各号のいずれかに該当する建築物で同項の条例によりその敷地が道路に接する部分の長さの制限が付加されているものにあつては、当該長さ)以上接する建築物について、条例で、その敷地、構造、建築設備又は用途に関して必要な制限を付加することができる。
建築基準法そのものに根とづく規定ではなく、あくまでも条例のため、全国共通の制限内容ではありません。多くの自治体が独自に定めていますが、ない場合もあります。
定められている場合は、一般的には、以下のようなものが多く、東京都同様、路地状敷地には特殊建築物の計画ができない事がよくあります。
(特定行政庁(管轄自治体)が路地定敷地に制限する規制の例) 特殊建築物 路地状敷地のみに接する敷地に計画制限 特殊建築物以外 路地状部分の幅員と路地状長さを制限
簡易宿所の注意点(都内)
以下のポイントに注意してください。
●建築基準法上有効な接道及び上記安全条例上の有効な接道(最低限2メートル接道→ただし特殊建築物の規定が適用されるため4mの接道が必要と考えてください。)
●東京都建築安全条例上の※窓先空地
※特に、都内は「窓先空地」にも注意してください。
窓先空地に注意
- 窓先空地とは
主に密集地において、共同住宅における火災時の避難を容易にするために、共同住宅の敷地のうち、1階の住戸の窓に直面する敷地部分において、幅員数メートルの空地を設け、その空地を避難経路として利用できるようにしたもの(空地とは建築物を建てられていない土地という意味)。自治体の条例により定められるもので、東京都では、東京都建築安全条例に規程されています。
東京都建築安全条例の「窓先空地」に関する該当箇所
(共同住宅等の居室)
第十九条 共同住宅の住戸若しくは住室の居住の用に供する居室のうち一以上、寄宿舎の寝室又は下宿の宿泊室は、次に定めるところによらなければならない。
一 床面積(下宿については、附室の部分を除く。)を七平方メートル以上とすること。
二 次のイ又はロの窓を設けること。
イ 道路に直接面する窓
ロ 窓先空地(通路その他の避難上有効な空地又は特別避難階段若しくは地上に通ずる幅員九 十センチメートル以上の専用の屋外階段(次項において「専用屋外階段」という。)に避難上有効に連絡する下階の屋上部分で、住戸等の床面積の合計に応じて、次の表に定める幅員以上のものをいう。次項において同じ。)に直接面する窓
住戸等の床面積の合計 | 幅員 |
百平方メートル以下のもの | 一・五メートル |
百平方メートルを超え、三百平方メートル以下のもの | 二メートル |
三百平方メートルを超え、五百平方メートル以下のもの | 三メートル |
五百平方メートルを超えるもの | 四メートル |
この表において、住戸等の床面積の合計の欄の数値は、耐火建築物にあつては、この表の数値の二倍とする。 |
三 避難階以外の階には、避難上有効なバルコニー又は器具等を設けること。
2 前項第二号ロの窓を設けた場合は、窓先空地(下階の屋上部分にあつては、その特別避難階段又は専用屋外階段とす る。)から道路、公園、広場その他これらに類するもの(以下「道路等」という。)までを幅員二メートル(住戸等の床面積の合計が二百平方メートル以下の場合にあつては、一・五メートル)以上の屋外通路(屋外に十分開放され、かつ、避難上有効に区画された通路を含む。)で避難上有効に連絡させなければなら い。ただし、特別避難階段が避難階の廊下その他避難の用に供する部分に通ずる場合は、この限りでない。
3 第一項第二号ロ及び前項の住戸等の床面積の合計には、次に掲げる部分の床面積は、算入しないものとする。
一 第一項第一号、第二号イ及び第三号の規定に適合する一以上の居住の用に供する居室を有する共同住宅の住戸又は住室の部分
二 第一項第一号、第二号イ及び第三号の規定に適合する寄宿舎の寝室又は下宿の宿泊室の部分
(昭六二条例七四・全改、平五条例八・一部改正)
(簡易宿所の宿泊室)
第三十七条 簡易宿所の宿泊の用に供する居室については、第十九条(第一項第一号を除く。)の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「住戸等」とあるのは「宿泊室」と、「三メートル」とあり、及び「四メートル」とあるのは「二メートル」と、同条第二項中「住戸等」とあるのは「宿泊室」と、同条第三項中「住戸等」とあるのは「宿泊室」と、「第一項第一号、第二号イ」とあるのは「第一項第二号イ」と読み替えるものとする。
読み方
- 共同住宅や寄宿舎には窓先空地が必要です。
- 簡易宿所はこの規定を準用しますから窓先空地が必要で、しかも寄宿舎などのような緩和規定はありません。また、建築基準法と違い「遡及」しないので、建築当時適法であったか否かは、関係ありません。
- あくまで簡易宿所の規定なので、ホテルや旅館はまた別の規制があります。 →ホテル・旅館に窓先空地の規定はありませんが前面道路の基準が適用されます。
以上、用地を探す場合の参考にしてください。
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